カズレーザー「パイナップルですよ」現代アートの境界線とバラエティ
#テレビ日記 #カズレーザー #しくじり先生
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(7月11~17日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
カズレーザー「ケースという側があると、先入観で作品だと思ってしまいがちですよね」
東京では代々木公園の上空に巨大な人の顔が浮かんだり、大阪では「表現の不自由展かんさい」が開催されたり。現代アートをめぐるニュースがいくつか報じられた先週、12日の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で現代アートが取り上げられていた。5日と12日の2週にわたる企画だ。
同番組は、授業形式のバラエティ番組。生徒役の出演者が先生役の出演者の授業を受講し、人生の教訓などを学んでいく。
今回の先生役はカズレーザー(メイプル超合金)だった。彼が昨年10月に同番組で担当した「ガセネタに惑わされないための授業」は、良質なテレビ番組に与えられるギャラクシー賞(放送批評懇談会)の月間賞を受賞。私たちはなぜデマやフェイクニュースに引っかかってしまうのか、その理由を平易かつ面白く説明したカズレーザーによる授業は、コロナ禍の誤った情報でトイレットペーパーが買い占められるといった時世の中で、まずもって教育的な価値のあるものだった。
と同時に見事だったのは、デマに引っかかる心理を説明する際にカズレーザーが紹介してた「ガム・ミルク理論」「もう1つの月理論」「いびつなアルマジロ理論」といったそれっぽい理論は、すべてデマだと授業の最後に明かされる構成。デマに騙される人を傍観者的に笑っていた側が、騙される当事者になっている反転。賞を獲るのもうなずける放送だった。
で、そんなカズレーザーの今回の授業のテーマは現代アート。しばしば高額で取り引きされるにもかかわらずその価値が一般にはわかりにくい現代アートについて学び、物事の本当の価値を見極める方法を知ろうという趣向だ。生徒役にはレギュラー陣の若林正恭(オードリー)、吉村崇(平成ノブシコブシ)、澤部佑(ハライチ)のほか、高山一実(乃木坂46)、金村美玖(日向坂46)、そしてインスタグラマーの亀井佳代だ。なお、番組は京都芸術大学大学院の小崎哲哉教授の監修のもと製作された。
番組は、現代アートに価値が生まれる3つの要素をカズがレクチャーする構成で進んでいく。5日の放送で1つ目の要素として挙げられていたのは、「インパクトのある話題性」。いまやアートの評価軸は見た目の美しさだけではない。特に現代アートと呼ばれる作品では、今まで誰もやっていないような表現が評価される。そこでは目に訴えかける美的なものというよりも、脳に訴えかけるインパクトこそがアートになる。よって、いままで見たことがない”新しさ”を受け止めるのが現代アートの楽しみ方だ、と授業は進む。
とはいうものの、そのインパクトの評価は簡単ではない。カズレーザーは授業の中で生徒たちにワークをさせる。示されたのは3つの写真。ショーケースに展示されたパイナップル、床に置かれたメガネ、壁に貼り付けられたバナナだ。実際に美術館に飾られたことのあるこれらの評価額と理由を、それぞれ予想させる目利きクイズのようなもの。
で、パイナップルに日向坂の金村やインスタグラマーの亀井が1億円の価値をつけてしまったりするわけだけれど、実際にはこれは学生のいたずら。評価額は0円。学生が美術の展示場にパイナップルを置いたまま帰ったところ、いつのまにかケースが被せられ、それを作品と勘違いした見学者が続出するという”事件”があったらしい。傍目に見るとトンチキな出来事だけれど、さて、自分が実際にこの展示場にいたとして、ただのパイナップルだと疑うことができるか。カズは次のように補足説明を加える。
「ケースという側(がわ)があると、先入観で作品だと思ってしまいがちですよね。なかなか疑いづらい」
流れの中でカズが自然に発したこの言葉。なるほど、翌週の授業の展開は、少なくともこの時点ですでに予告されていた。
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