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日刊サイゾー トップ > 社会  > 元ヒットマンの嘆き「いちばん後悔しているのは…」

組織に人生を賭けた元ヒットマンの嘆き「いちばん後悔しているのは…」【2021年のヤクザたち】

「人生を逆転するにはここしかない」

 男が所属した組織は決して、男をぞんざいに扱ったわけではない。組織の功労者として手厚くもてなしとさえ言える。だが、それだけで一生暮らしていけるかといえば、現実はそうではなかったのだ。

 「2000万の銭も毎月の会費や臨時徴収、それに生活費で底をついてきた。ワシが自分で決めて身体を賭けたからこんなことは言いたないけど、穿った見方をすれば、放免の銭も結果的に組に回収されたんと同じになってもうたわけや。ワシに甲斐性がなかったんやけどな」

 そもそもなぜ男はジギリをかけることになったのだろうか。

 「ワシの場合は借金や。銭でクビが回らんようになった。それで一発仕事すれば、借金をチャラにして銭もくれるとなったんやな。人生を逆転するにはここしかないと思うたんや。今思えば、そもそも理由が不純やわな」

 次第に会費を滞納し始めることになった男は最高幹部から降格。それでも会費の未払いは嵩み、組織内でもだんだんと肩身が狭くなっていった。そして、カタギになることを申し出たのであった。出所からわずか2年後のことだった。

「ほんまやったら、破門やったやろな。ただワシの場合はジギリをかけた功労者ということで、破門ではなく、除籍にしてもうた。今となってはどっちも変わりないけどな。それでカタギになって知り合いの社長が団地を世話してくれ、C型(肝炎)もっとったから、生活保護を受けれるようになったんや」

 男に、ヤクザになったことを後悔しているかと尋ねてみた。男は少し思案したあと、こう答えて笑った。

 「ヤクザなったことよりも、親の言うことを聞かんと勉強せんかったことから後悔しとるわ。子供の頃に親の言うことを聞いてりゃ、こんな人生になってへんかったやろからな」

 男の携帯はスマートフォンですらなかった。組のために人生を賭けた男が述懐する様には、最後まで哀愁が漂っていたのだった。

(文=佐々木拓朗)

佐々木拓朗(ライター)

アウトロー取材経験ありの元編集者のフリーライター。自身の経験や独自の取材人脈を生かした情報発信を得意とする。

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最終更新:2021/07/20 16:27
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