“密告社会”で芽生えた恋愛感情は成就するのか? 台湾発のホラー映画『返校 言葉が消えた日』
#ホラー #台湾 #返校 言葉が消えた日
流血と痛みを伴う最後の授業
ヒロインとなる美少女ファンを演じたのは、台湾の新世代女優として注目されている1998年生まれのワン・ジン。14歳で小説家デビューも果たしている才媛。モンスターに追われ、学校内を逃げ惑う際に揺れ動くショートヘアから覗く細いうなじが、ほんのりとした色香を感じさせる。ファンのことを一途に想い続ける実直な男子生徒・ウェイを演じたのは、オーディションで選ばれた新人のツォン・ジンファ。若いキャストたちが織り成す恋愛模様が、ホラーファンタジーを魅力的なドラマへと膨らませている。恐怖政治で校内を支配しようとするバイ教官を演じたベテラン俳優のチュウ・ホンジャンは、国立台北芸術大学演劇学部の学部長でもあるそうだ。
台湾における恐怖政治は長きにわたって続いたが、次第に民主化運動が高まり、1987年になってようやく戒厳令は解かれる。国民党による一党支配が終わったのは、さらに2000年になってから。台湾の人たちは「自由」は与えられるものではなく、自分たちで手でつかみ取るものであることを知っている。そして台湾の人たちは自由を謳歌するまでに、大きな犠牲を払ってきた。およそ14万人が政治犯として投獄され、3000人から4000人が処刑されたと言われている。
現実世界で台湾は民主化を実現させることになるが、悪夢の世界ではファンとウェイは学校からどうしても逃げ出すことができずにいた。過去のトラウマにこだわるあまり、心の中の檻へと自分から入っていく人は、劇中の主人公たちに限らずいるのではないだろうか。
主人公たちは傷つきながらも、愛という言葉の本当の意味を知ったとき、心の檻からようやく解放されることになる。流血と痛みを伴う、大切な授業だった。夢と現実、自由世界と恐怖政治、愛と独占欲、そして大人と思春期……。台湾映画『返校』は、ふたつの異なる世界のはざまに墜ちていった若者たちの叫びを描いた鮮烈なホラーミステリーとなっている。
『返校 言葉が消えた日』
監督/ジョン・スー
出演/ワン・ジン、ツォン・ジンファ、フー・モンボー、チョイ・シーワン、チュウ・ホンジャン
配給/ツイン R15+ 7月30日(金)より日比谷・TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
(c)1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.
https://henko-movie.com
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