「OSUMIは怒るだろうな」 ヒップホップ史に名を刻む〈SHAKKAZOMBIE〉の “OSUMI”追悼座談会
#HIPHOP #追悼
作品としての精度を保つことがOSUMIへの恩返し
――では、そんなSHAKKAZOMBIEの構成力、こだわりを感じた曲を挙げるなら、何になりますか?
D 「虹」がすごい好き。リリックすべてがパンチラインで構成されてる。
S サビがわかりやすくていいよね。あとさ、純粋に歌がうまい。カラオケとか行っても「いい声してんなー」って思ってた。
H トリビュート盤を作るにあたって、まとめてSHAKKAZOMBIEの歴代曲を聴いてたんだけど、サビがとにかくちゃんとサビなんだよね。わかりづらさがない。改めて「だからSHAKKAZOMBIEは売れたんだ」って思えたもんね。
――トリビュート盤では「虹」をはじめ、歴代楽曲のリミックスやリメイクが制作されていますが、このような構成にした理由というのは?
I 最初はすべて新録で3曲くらい、って考えてたんですよ。僕が関わる作品であって、かつ20年ぶりにSHAKKAZOMBIE名義でラップをするから構えちゃった部分もあって。でも、HAZIMEから「元曲のままで純粋なリミックスも入れたほうがいい」って提案があり、だいぶ気持ちが楽になったら欲も出てきて、結果的に6曲で落ち着きました。
――以前、井口さんと会った際に「リリックを真新しく書くことよりも、少し手直しするほうが難しい。でも、SUIKENの一言で救われた」と話されていましたが、それがリメイクの難しさということですかね。
I 「BIG BLUE」はイチから全部書き直そうと思ってたんだけど、すでに完成されているもので、聴き慣れている人たちもいる。当時のリリックが気に入っていないなら手直ししてもいいと思うけど、ちょっとアレンジするほうが聴く側も楽しめるし、面白くなるんじゃないか、ってSUIKENから言われたんですよ。それを言われて気が楽になったけど、実際やってみると難しいものでね。
――他にもCreativeDrugStore(VaVa/JUBEE/BIM/in-d)による「共に行こう」や、5lackとPUNPEE兄弟による「5o tight So deeP」(原題「So Tight, So Deep」)のリメイクも、次世代のアーティストが敬意を持って臨んでくれていますね。
I PUNPEE兄弟にはダメ元で連絡したら快諾してくれて、さらに「共に行こう」はCreativeDrugStoreでリメイクするのは面白いんじゃないかと提案してくれて。彼らはSHAKKAZOMBIEのことを大好きと言ってくれている世代なので、本当にありがたい話です。
H 「5o tight So deeP」はPUNPEEと5lackにしかできない形のリメイクになったもんね。原曲が良い意味で残ってない。
I 真面目に話すと、OSUMIとは長い付き合いの中で、うまくいってない時期もあった。そりゃ長いことずっと一緒にいたらいろいろあるからさ。でも、あれだけ強いこだわりを持ってたOSUMIが「OKかNGか」という判断はわかってるつもりなの。「こういうことやったら嫌がるだろうな」って感覚はすぐわかる。だから、一番最初にやまちゃんから提案されたときは、すごくうれしかった反面、「場合によっては嫌がるかな、OSUMI」って考えもした。これまでSHAKKAZOMBIEとして活動してきた中で、プロモーションやインタビューの現場、OSUMIが嫌がってきたことはたくさんあったからさ(笑)。だからこそ同じ現場にいたハッシーはその感覚を共有できるし、僕と彼女が「OK」と判断したものは、きっとOSUMIは喜んでいるに違いないだろうな、って。しかも、OSUMIとゆかりのある有志が集って全力で臨んでくれてるわけだからね。
ただ、「BIG BLUEMURO’s KG Remix)」のPVでOSUMIの笑顔の写真が出てくるんだけど、本来だったらOSUMIは出したがらないんだよね、そういう写真。でも、OSUMIのことを知ってる人たちは、あいつが常に笑顔だったことを覚えてる。それを伝えたい気持ちがあったから、「OSUMIは怒るだろうな」って思いながらも、何かあったら僕が責任をとればいい、そこまで突き詰めて作った作品でもあるんです。
――トリビュート盤のクオリティを保つことが、井口さんのOSUMIさんへの恩返しになったわけですね。
I ちょっとうるさいこと言っちゃいますね。「BIG BLUE」のリリックは時間をかけて書いて、情けない話かもしれないけど、自分で書きながらウルッときちゃったんですよ。30年来の付き合いの中で、ここまでOSUMIのことを考えたのなんて初めてのことだったし、「ヒデボウくん、久々のラップだったけど、よかったんじゃない?」って関わってくれた人たち、聴いてくれた人たちに思ってもらえるのなら、OSUMIも納得してくれるんじゃないかなって。……って、しんみりしちゃったけど。
――では最後に、『BIG-O DA ULTIMATE』の制作を振り返っての総括を井口さんの口から聞かせてください。
I なにより一番驚いたのは、OSUMIのために僕はこんなに動けるんだと思えたこと。OSUMIが亡くなったのは悲しいことだけど、それで作られた道筋によって久々に再会できた人、新しい出会いもありましたからね。みんなOSUMIのために協力してくれて、本当にありがたいの一言に尽きます。
[JK]
『BIG-O DA ULTIMATE』
SHAKKAZOMBIE
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