『チコちゃんに叱られる！』NHKがCMを制作!?「イチキュッパ」の誕生秘話

NHKが商品CMを制作!?

　この日2つ目のテーマは「298円をなんでニーキュッパと呼ぶ？」という疑問であった。そういえば、トイザらスは9,999円や29,999円など端数を99円にしがちだったと記憶している。あれは微妙だったな……。そして、チコちゃんが発表した正解は「内池さんが2秒縮めたかったから」だった。誰だ、内池さんって!?

　詳しく教えてくれるのは、専修大学商学部の奥瀬喜之教授だ。曰く、298円の「ニーキュッパ」、198円の「イチキュッパ」、398円の「サンキュッパ」など、9と8が並ぶ中途半端な値段を端数価格と呼ぶのだそう。この中途半端な値段を我々はお得に感じるが、そこには2つの理由があるという。

　1つ目は1番左の数字だ。人は値段を見るとき、基本的に左から読む。なので、20,000円と19,800円では後者のほうが左の数字が小さくなっており、実際の値段以上にお得と感じやすい。2つ目は、右側の数字の塊。9,800円と明らかに中途半端な数字になっており、「キリのいい数字から値引きされた」と感じやすいのだ。お得感を感じやすいこの端数価格は現在、多くの店で使用されている。

　いや、こっちが知りたいのはそういうことじゃない！　なぜ、それらを「イチキュッパ」「ニーキュッパ」と呼ぶかが知りたいのだ。

「それが、私にもよくわからないんですよねえ。でもですね、噂によるとあるカメラメーカーが広めた呼び方じゃないかと言われてますよ」（奥瀬教授）

　というわけで、番組はカメラメーカーのリコーに話を聞きに行った。どうやら、同社が1978年に発売したカメラの値段が39,800円で、そのCMで39,800円を「サンキュッパ」と表現したのが普及のきっかけになったそうなのだ。というか、40年以上前のカメラが約4万円!?　今とほとんど物価が変わっていないんだな……。

　その後、番組はこのカメラのCMを作り「サンキュッパ」を世に広めたCM界のレジェンド・内池望博さんの元にも話を聞きに行っている。

「私が39,800円をサンキュッパと言い換えました。CMは秒数が短いですから、『サンマンキュウセンハッピャクエン』と言うのはちょっと長いんですよ。サンキュッパって言い換えると2秒縮まるんです。そうすると連呼もできますし」（内池さん）

「サンマンキュウセンハッピャクエン」と言うだけで約3秒を要するが、「サンキュッパ」にかかる時間はたった1秒である。つまり、2秒節約することができる。値段を2度連呼すれば、あわせて4秒の節約になる。4秒あればその分、別の情報を伝える時間が生まれる。要するに、「何キュッパ」とは内池さんが短いCMの時間の中で繰り返し値段を伝え、他のセリフも追加するために使用した言葉だったのだ。

「その言葉を見つけまして、当時人気者だった星セント・ルイスに（CMに）出演してもらって『サンキュッパ』って言ってもらったんです。セント・ルイスのCMが流れ、しばらくしたら広告関係の人から『サンキュッパって言っていいか？』『ニーキュッパって言っていいか？』という問い合わせがあったんですね。私は『ドンドン使ってください』と申し上げ、巷で『イチキュッパ』『ニーキュッパ』が乱舞しましたね」（内池さん）

　ちゃんと呼び方の許諾を取り、仁義を切ったなんて当時の業界人は偉かったんだな……。兎にも角にも、そのCMが見てみたい！　でも、何しろ40年以上前の作品だ。なかなか見つからなかった。

「もう1度撮ったらどうですか？　手が覚えてますから、コンテは僕が描きます」（内池さん）

　新しいCMを撮るとは、バイタリティが昭和！　さすが内池さん、すごい行動力だ。NHKでCMを制作するというのも異例である。そんなこんなで、最初に決めるのはキャスティングだ。結果、星セント・ルイス役はなぜかジョイマンに決定！　いや、セント・ルイスとジョイマンではスピード感があまりに違うんだけど……。でも、さすがCM界のレジェンド。メーカー名の「リコー」を「チコー」に変更し、件のCMは何とか無事に制作された。

「でも、ジョイマンのキレはあんまりなかったですね」（清塚）

　ちなみに、今夜放送『チコちゃん』のゲストは中山秀征とハリセンボンの近藤春菜。そして、来週からは東京五輪中継により3週にわたって『チコちゃん』の放送は休止する模様。果たして、今年は『チコちゃん』夏の拡大版スペシャルは放送されるのだろうか？

寺西ジャジューカ（芸能・テレビウォッチャー）

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、（昔の）プロレス系。『証言UWF』（宝島社）に執筆。

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