大村崑、89歳になった今も「元気ハツラツ!」 レジェンド俳優が語るテレビ、CM、映画の裏側
#映画 #インタビュー #大村崑 #ロボット修理人のAi(愛)
一度も「カルピス」を飲んだことがない
ー大塚製薬とはCM契約が終わった後も、お付き合いがあるそうですね。他の栄養ドリンクを扱っているメーカーからのCMオファーもあったりしたんじゃないですか?
いや、他のメーカーからのCMの話はありません。かつては俳優がCM出演するのは、1人1社と決まっていたんです。同業メーカーのCMに出るなんて、もってのほかです。今の人気俳優は何社ものCMに出ているけど、あまり多くのCMに出ているとイヤらしく思われますよ。「オロナミンC」のCM契約は終わったけど、大塚製薬の創業者一家とはお付き合いが続いています。創業者の息子だった社長の結婚式の司会、僕が務めたんです。その息子たちの結婚式の司会も、すべて僕がやりました。それもあって、今でも「オロナミンC」が送られてくるんです。僕の自宅の冷蔵庫は「オロナミンC」だらけです(笑)。それに僕はいまだに「カルピス」を飲んだことがありません。「オロナミンC」以外の清涼飲料水は、口にしないようにしてるんです。特に人前ではね。ビールもほとんど飲まない。「オロナミンC」以外で飲むのは、基本的に水かお茶ぐらいですよ。
ースポンサー企業との信頼関係を感じさせるお話、ありがとうございます。改めて、27年ぶりの映画出演作『ロボット修理人のAi(愛)』について。役づくりなどはどうされたのでしょうか。
役づくりの必要はありませんでした。田中じゅうこう監督が僕を選び、あとは田中監督に言われたとおりにやっただけです。撮影の前日に田中監督と一緒に食事をし、翌日「ここです」と榛名湖に連れていかれて、スコ~ンと晴れ渡った湖の雄大な景色を眺めながら、演じさせていただきました。変に芝居をしたら、風景に負けちゃうでしょ。あのロケ地だからできた芝居でしょうね。これが、ちっちゃい公園での芝居だったら、違った演技になったんじゃないかな。役者って、ロケ地の景色やセット、身に着ける衣裳や小道具で、その役になってしまうものなんです。例えば、煙管を持つ仕草次第で、役者は町人にもお殿様にもなれるんです。その場に合わせて、役に合わせた芝居をするのが役者です。僕が演じた老人は登場シーンはあまり多くないけど、僕の台詞がストーリーの軸になって、登場人物たちを結びつける重要な役でした。また、主人公の少年を演じた土師野隆之介くんはまだ若いけど、すごくよかった。不思議な物語だけど、どんでん返しもあって、最後には清々しい気持ちになれる映画ですよ。
ー大村師匠のお話を聞いていると、CMも映画出演もギャラ以上に大切にしているものがあるように感じられます。
それはね、やっぱり僕をここまで育ててくれた社会に恩返しをしたいということです。ありがとうね、という気持ちです。予算が少ない番組やイベントにも、喜んで出させてもらっています。自分が参加することで、その体験が宝物になるわけです。映画に久しぶりに出たおかげで、こうして取材にも来てもらえたしね。心の宝物は大切です。金銭じゃない。美味しいものを食べるのもいいけど、「俺はあの作品に参加したんだ。いい作品になったな。監督も喜んでくれたな」と。そう思えることが、最高に嬉しいんです。僕なんて、医者から「40歳まで生きられない」と言われたし、58歳の時には大腸がんの手術を受けています。CMが流れている間は言えなかったけど、左目は小1の時に野球のボールが当たって視力がありません。片耳は子供の頃に僕を厳しく育てた伯母に叩かれ、ずっと難聴のまま。肺は片方ない。でも、健康に気を配って過ごしてきたら、今でも元気で、仕事にも呼んでもらえる。世界最高齢の喜劇俳優として、ギネスに載るのが目標なんです。週に2回ライザップに通い、2時間みっちり鍛えています。今がいちばん「元気ハツラツ」ですよ(笑)。
取材・文=長野辰次
撮影=石田寛
■『ロボット修理人のAi(愛)』
高校を中退した倫太郎は、独学でロボットについて学んでいた。ある日、アルバイトで旧型AIBOの修理を頼まれることに。大村崑さんは湖で起きる出来事を見守る、謎めいた老人役で出演。
監督/田中じゅうこう 脚本/大隅充
出演/土師野隆之介、緒川佳波、金谷ヒデユキ、亮王、岡村洋一、堀口聡、野口大輔、水沢有美、丸山ひでみ、亜湖、ぴろき、大村崑、大空眞弓
配給/トラヴィス 7月10日より新宿K’s cinema、7月24日(土)より横浜シネマリン、7月30日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
夕焼け劇場 presents ©2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY
■公式HP
大村崑(おおむら・こん)
1931年兵庫県神戸市生まれ。キャバレーのボーイから、司会、そしてコメディアンへと転身。1958年に花登筐脚本のコメディ『やりくりアパート』(朝日放送)に出演し、人気者に。1959年には『番頭はんと丁稚どん』(毎日放送)、『とんま天狗』(読売テレビ)に出演し、さらに人気を高めた。1992年から始まった2時間ドラマ『山村美紗サスペンス 赤い霊柩車』(フジテレビ系)は、今も続く人気シリーズ。2018年にはNHK大河ドラマ『西郷どん』で西郷隆盛の祖父・隆充を演じた。2018年から瑤子夫人と共に「ライザップ」でトレーニングを受けていることも話題に。
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