矢部太郎が振り返る絵本作家の父と『公園通り劇場』の思い出
#矢部太郎 #ぼくのお父さん #やべみつのり
オチの弱さも漫画では武器になる?
「もともと絵を描くのは好きだったので、『虎の門』(テレビ朝日)という深夜バラエティ番組のコーナーで絵を描いたり、芸人の先輩に頼まれてポスターやチラシの絵を描いたりはしていました。逆に言うと、自分の絵を人に見せる機会はその程度でしたね」
ここ数年に限っても又吉さんの小説や鉄拳さんのパラパラ漫画など、お笑いとは別の表現で活躍する芸人さんは少なくない。矢部さんの漫画作品は、テレビで見る矢部さんを彷彿とさせる優しい空気感が魅力だが、自身では自らの作風をどう分析しているのか?
「マンガだったらオチが弱くても、お笑いとは別の感情や余韻、ペーソスみたいなものに、かえって繋げやすい。そこは僕のもともとの芸風にもすごく合っていると思います。もし、『4コマ漫画でギャグの精度を上げていきましょう』という編集者さんが担当だったら、たぶんキツかったです(笑)」
矢部さんが現在の作風を確立できたのは、そんな編集者からのアドバイスも大きかったようだ。
「普通に考えて芸人さんが漫画を描くとしたら、オチやギャグをもっと追求すると思うんですよね。できれば僕も4コマで鋭く落として爆笑させて終わりたいんですけど、けっこう早めにそれは自分には無理だと思って諦めました。新潮社さんとの最初の打ち合わせでは4コマ漫画も見せたんですけど、『矢部さんはちょっと4コマの鋭いオチは向いていないかもしれない。8コマ構成でいきましょう』と、わりとはっきり言われて(笑)。その助言のおかげですね」
創作はiPadで『clip studio』アプリを愛用。本作ではカラーにも挑戦した。家族の在り方が問い直されている昨今、矢部さんは父の絵日記を見て、迷いや不安を抱えながら子育てに向き合っていたことを改めて感じたとも語った。
「でも、『そりゃ、そうだろうな』と思うんですよね。親になった瞬間に何か正解を持てるわけではないし、みんな成長していく過程で親になっただけだから。この漫画を読んで『自分の親も変な親だな』と考える人もいると思いますが、今回の本で僕は何か結論を描いたつもりはなくて、いろんな読み取り方ができる余白は残せたのかなと。それも“オチてない”って話かもしれませんけど……(笑)」
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