『チコちゃんに叱られる!』なぜ円周率はずっと続くのか…その“終わりなき旅”
#NHK #チコちゃんに叱られる!
角を増やしながら挑戦する円周率の“終わりなき旅”
この日最後のテーマは、「なんで円周率はずっと続くの?」という疑問であった。解答者は野々村だ。
野々村 「(円周率は)宇宙ですね。宇宙は限りなく、どこまでが壁かわからないじゃないですか。うちの家庭は丸く収まってますけど」
チコちゃん 「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
家では奥さん(野々村俊恵)から叱られ、職場ではチコちゃんに叱られる野々村。見ていてあまりに不憫だ。そして、チコちゃんが発表した正解は「円の長さを正確に測るのは本当に無理だから」であった。なに、その元も子もない答えは! というか、野々村の回答とあまり大差ないと思う。正解にしても良かったのでは?
詳しく解説してくれるのは、群馬大学共同教育学部・教授の伊藤隆先生だ。先生曰く、円周率とはそもそも「円の直径と円周の長さの比率」だそう。式にすると「円周=直径×円周率」で表すことができる。つまり、“円の直径を何倍にしたら円周の長さになるか”を表す値が円周率だ。
人間が円周率に興味を持ち、調べ始めたのはおよそ4000年前。古代バビロニアの人々は実際に描いた円で測り、結果、直径の“3とちょっと倍の長さ”になることを発見した。要するに、円周率は“3とちょっと”であることがわかったのだ。しかし、この方法で円周率を正確に求めるなら、円も正確に描かなければならない。
「でも、それは不可能なんです。例えば、コンパスにしても鉛筆の線の太さってどんどん変わりますよね?」(伊藤先生)
コンパスを使って円を描き、2つの箇所をアップでよく見ると、線の太さが僅かに違うことがわかる。線の太さが変わると、円周の長さも変わる。線の太さが場所によって変わると中心からの距離も変わるため、正確な円じゃなくなるのだ。だから、円は正確に描くことはできない。よって、実測で円周の長さを測るのは不可能なのだ。まあ、“線の太さ”を問題視するなら円に限らずどんな図形も実測不可ということになるけども……。
話を元に戻そう。では、どうやって円周率 3.14 を導き出せたのか?
「紀元前250年頃、アルキメデスが画期的な方法で導き出しました。アルキメデスは円を多角形で内側と外側で囲み、『円周は2つの多角形の周の長さの間になるはず』と考えたんです」(伊藤先生)
さらに、「多角形の角の数を増やせばどんどん丸に近づく」という事実も思いついたアルキメデス。「正六角形を倍の正十二角形のほうが」→「正十二角形より正二十四角形のほうが」……といった具合にどんどん円に近付いていき、最終的に彼は正96角形を使い「3.14084507 < π < 3.142857142」にまでたどり着いてみせた。頭の良さで歴史に名を刻む人が考えることは、やっぱりすごい!
ちなみに1600年、オランダのルドルフ・ファン・コーレンという数学者は約461京角形を使って円周率の範囲を求めたそう。よくそんなに角を取ったものだな……。もう、ここまで来るとほとんど円だ。日本で関ヶ原の戦いが行われているさ中、オランダではそんなことが起こっていたのか!
「(角は)増やしていこうと思えば、果てしなく増やせるんです。461京角形よりは1000京角形のほうが正確になりますし、1000京角形より1垓角形のほうが正確になります。垓(がい)、?(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)……果てしなく続いて、終わりはないんです」(伊藤先生)
円の長さを正確に測ろうとしても終わりは来ないし、円周率はどこまでも続く。そういえば、『3年B組金八先生』(TBS系)第5シリーズで、数学教師の乾友彦(森田順平)が「『次の桁で割り切れるかもしれない』と学者たちは今も円周率を研究している」と説いていたが、あの発言はいかがなものか? 永遠に割り切れないのに! 終わりが訪れるなら、それは円じゃなくて多角形だ。まさに、終わりなき旅である。
「数字がずっと続くことだけはわかっているので、小数点の先を知りたがって人類は新たな桁に挑戦しているんです」(伊藤先生)
ちなみに現在、円周率は50兆桁まで判明しているらしい。2020年にアメリカのティモシー・マリカン氏が50兆桁の数字を導いており、その桁の数字は「8」だったそうだ。
気になるのは、ギネス世界記録のファクトチェックだ。「8」という数字が本当に合っているのか、ちゃんと確認済みなのだろうか? 何しろ、人類未踏の域。正しいのか否か、判定できる能力をギネスが持ち合わせているのかが気になる。
こういう細部を気にしていると、やはりキリがなくなってしまう。まさしく、終わりなき旅だ。
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