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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 前田日明と「リングス」の曳航(最終回)
リングス旗揚げ30周年記念 短期集中連載『天涯の標』

【格闘王・前田日明と「リングス」の曳航 最終回】格闘界に放たれた進化する遺伝子たち

ボクシング界で台頭したロシア勢の裏で

琴欧洲がリングスに参加した可能性も!?(Getty Imagesより)

 HERO’SはTBS系で中継され、人気イベントとして定着する。先行するK-1MAXが魔裟斗や小比類巻貴之らによって立ち技格闘技の中量級を稼げるジャンルにしたのに続き、総合でもこの分野が注目を浴びた。山本KID徳郁や宇野薫、須藤元気に続き、所英男や宮田和幸もスターの仲間入りを果たした。

 かつてリングスの「後楽園実験リーグ」で前田が開拓しようとした総合格闘技の中量級はこうして花開いたのだ。

 前田はHERO’Sスーパーバイザーとして、ただ禄を食んでいたわけではない。胸の内には「天下三分の計」があった。まずはK-1と結託して、PRIDEを潰す。その後にK-1も倒し、自分が創った格闘技界をもう一回復興させたい──。

ういう考えもありましたよ。選手を育てて、少しずつ出していって。で、実績を積んでいって影響力を生み出す。どこかのタイミングでロシアのコマンドサンボを利用して、強力な選手を育成していく。ロシアとのつながりはありましたから。

 そのころ、ボクシング界でロシア勢が大躍進していました。米国で重いクラスのチャンピオンがほとんどロシア、東欧系になったり。

 日本で活躍した中軽量級で勇利アルバチャコフ(元WBC世界フライ級王者)。俺、彼のことは知ってたんです。あるとき、「こういう選手がいるんだ。日本のボクシング関係者を紹介してくれないか」って頼まれた。

 そのとき、いくつかボクシングジムを紹介しました。人づてに俺から誰かに行って、また誰かに行ってって感じで。二つ、三つ介して協栄ジムに入ったんだと思います。

 もう一つ、大相撲の琴欧洲 (元大関・琴欧洲勝紀。現在は年寄・鳴戸)。リングスをやってるころに「オリンピックでフリーのアマチュアレスリング130キロ級が廃止になる。こいつらも何とかリングスで使ってくれないか」と相談されたんです。

 リングスはそのころ、もう終わりのほうで。PRIDEとやり合ってるところだったんで、そんな余力はなかった。今からレスリング130キロ級っていっても、「どうなんかな?」っていうのもありましたし。

 何よりも、彼らに聞いたら、「いや、お金を稼ぎたいんだ」って盛んに言うんで。軽い気持ちで、「じゃあ、相撲に行ったらいいじゃないか」って言ったら、彼らは彼らで頑張ったんでしょう。どこかで相撲協会とコネクションを作って。大相撲に出るようになったんです。その第1号がブルガリア出身の琴欧洲だった。〉

 同じころ、前田は修斗と交渉の席についている。創始者である佐山聡はすでに放逐されていた。

〈 坂本一弘(「サステイン」代表)君と、石山重行・修斗協会会長(当時)が二人で来ました。

「何を言うんかな?」と思ったら、「中量級の選手をブッキングしてくれないか」と。

 で、俺は言ったんです。「いいですよ」と。

 いいんだけど、「修斗の名前で今までさんざんに揶揄してきたプロレス界と、パンクラス、リングスに対してちゃんと謝罪会見をしてくれ」と。もう一つ、「佐山聡も元に戻してくれ」と。だって、おかしいでしょ。創始者なのに追い出して。

 確かに彼とはいろいろあった。でも、先輩ですから。追い出したことについては立場的にちょっと嫌なんで。

 「その二つをちゃんとやってくれるんだったら、無報酬でいくらでも。紹介でもブッキングでもしますよ」って言ったんです。結局、二つともできませんでしたね。〉

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