トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『#家族募集します』が描く「ホームドラマ」とは

TBS新ドラマ『#家族募集します』とホームドラマのヒット作『ぎぼむす』『マルモ』に共通するもの

『#家族募集します』公式サイトより

 7月9日にスタートする、ジャニーズWEST・重岡大毅主演の新ドラマ『#家族募集します』(TBS系)。医療モノや刑事モノ、ラブコメディなどさまざまなジャンルのドラマが揃う今期の夏ドラマのなかで、唯一の「ホームドラマ」だ。

 ある事情からシングルファザーとなった出版社勤務の赤城俊平(重岡)が、偶然再開した幼なじみの小山内蒼介(仲野太賀)の提案で、一緒に暮らして子育てをシェアする“家族”をSNSで募集するところから始まるこの物語。SNSで発信したそんな突飛な提案に、教師でシングルマザーの桃田礼(木村文乃)と、夢を追う子持ちシンガーソングライター(岸井ゆきの)が集まり、一つ屋根の下での奇妙な生活が始まる、というストーリーだ。公式サイトには、“新時代のホームドラマ”とある。

ホームドラマは日本のテレビドラマの原点だった

 日本において、ホームドラマの歴史はテレビドラマの歴史と同じと言えるほど長い。というのも日本初のテレビドラマは、1940年にNHKで実験放送された、結婚前に揺れる母と兄弟を描いた約12分間の生ドラマ『夕餉前』だったからだ。1970年代の高度経済成長期にはホームドラマは全盛期を迎え、“ドラマのTBS”と呼ばれるようになったTBSの名作の数々、『肝っ玉かあさん』や『時間ですよ』『岸辺のアルバム』、民放ドラマ史上最高の視聴率56.3%を記録した『ありがとう』など、多くのホームドラマが歴史に刻まれた。

 その後、1978年から始まった『熱中時代』(日本テレビ系)や1979年放送開始の『3年B組金八先生』(TBS系)など「学園ドラマ」が流行り、1980年代後半~1990年代前半には恋愛にフォーカスした「トレンディドラマ」が隆盛を極めた。やがてさまざまなお仕事系ドラマも登場し、一括りにはできない多様な時代へと移り変わっていく。その時代の流れのなかでもホームドラマは姿を変え形を変え、繰り返し多くの脚本家たちの手によって描かれ続けてきた。

 70年代の優しく平和で心温まる家族の物語から、80年代の『積木くずし−親と子の200日戦争−』(TBS系)に代表されるように家族の崩壊といった家族が抱える暗い影も描かれるように変化したホームドラマは、2000年代に入るとさらに多様な家族の形が描かれるようになっていった。

疑似家族の物語に共通するもの

 『#家族募集します』は他人同士が一つ屋根の下に暮らし、家族となっていく物語だ。この血縁関係のない疑似家族がさまざまなことを乗り越えて本物の家族になっていく、というテーマは、2000年以降のホームドラマに度々登場しているという印象がある。2004年の『ホームドラマ!』(TBS系)は、ある海外ツアー中のバス事故で愛する人を失った遺族らが、一つの一軒家に住み共同生活を始めるというストーリーだった。ほかにも芦田愛菜と鈴木福による双子が話題を呼んだ2011年の『マルモのおきて』(フジテレビ系)を始め、2018年の『anone』(日本テレビ系)、『義母と娘のブルース』(TBS系)など、数多い。さらにドラマではないが、疑似家族といえば、2018年公開の映画『万引き家族』も思い出される。

 70年代の温かなホームドラマの時代から、共同体が崩壊し、家族の形も崩れ去り、不確かなものになった近年。どの物語もそれぞれ異なる設定で描かれているが、これら疑似家族の物語に共通するものは、心に傷を抱えていたり社会に拒絶されていたり、生きづらく寄る辺ない暮らしのなかで、それでも温もりや絆を求め、助け合う家族となり、絆とともに自己を取り戻していく、そんな姿だ。繰り返し描かれてきたのは、結局のところ、心の拠り所は“家族”にほかならなくて、いくら多様な形に変化しても、そこに多くの希望と光があるからなのだと思うのだ。幾つの時代を経てもホームドラマが人々の心を捉え続けるのは、究極の人間ドラマだからなのかもしれない。

 コロナ禍でさらに人との交流や温もりを感じる触れ合いが減ってしまった今、新時代のホームドラマとして始まる『#家族募集します』。連綿と続く日本のホームドラマの歴史のなかで、どのような家族の物語になるのだろうか。いずれにしても、シングルファザー・マザーが抱える葛藤や家族への愛情に、きっとどうしても感動せずにはいられないだろうと今から思うのだ。

■番組情報
金曜ドラマ『#家族募集します』
TBS系毎週金曜22時~
出演:重岡大毅、木村文乃、仲野太賀、岸井ゆきの、金子大地、小松和重、福山翔大、丸山礼 、石橋蓮司、佐藤遙灯、宮崎莉里沙、三浦綺羅 ほか
脚本:マギー
演出:福田亮介、村尾嘉昭
プロデューサー:佐久間晃嗣、岩崎愛奈、那須田淳
主題歌:ジャニーズWEST「でっかい愛」(Johnny’s Entertainment Record)
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kazokubos

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2021/07/09 19:00
ページ上部へ戻る

配給映画