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『ゆりやんと7人のツッコミ』と小沢真珠と 「特番ってここまでなんでもやっていいもんなん?」

おいでやす小田「何がやーーー!」

 振り返ってみれば、今年の『R-1』でゆりやんが披露した2本のネタは、どちらもツッコミ寄りのものだった。電話や観葉植物にツッコんだり、自分で自分に自虐的なツッコミを入れたり。それはある意味で、賞レース向きのわかりやすいネタだったのかもしれない。そんな彼女が勝ち取った特番で披露したのは、ツッコミ不在でボケ続ける、必ずしもわかりやすくはない姿だった。

 ショートネタを何本か挟んで(そのショートネタもクレイジーなのだけれど省略)、続くコーナーはネタ番組風のVTRへ。メイン司会はゆりやん、サブ司会は関西テレビのアナウンス部長の大橋雄介アナウンサーだ。

 まずネタを披露したのはヒューマン中村。『R-1』で6年連続ファイナリストとなったネタ職人は、しっかりと持ちネタを演じた。ネタを見ながらステージ脇の司会者席で微笑むゆりやん。なんのことはない、ただのネタ番組のような映像が続く。

 しかし、続いて登場したピン芸人の守谷日和がネタをやり始めたところで、大きな音が鳴り画面は真っ暗に。再び画面が映ると、そこには頭から血を流して倒れているヒューマン中村が横たわっていた。どうやら天井から落下した照明で頭を強く打ち死亡したようだ。

 ここから映像はサスペンスもののコントに急展開する。守谷と大橋アナの延々と続くつかみ合いのケンカ、返り血を浴びたTシャツを着ているも容疑者から外される観客、番組プロデューサーとして登場する小沢真珠、トイレットペーパーで首を締められて死ぬ守谷、カンテレの建物を一周するドミノとピタゴラスイッチ的な仕掛け――。文字だけで書くとわけがわからないかもしれないけれど、映像を見ても別によくわかるわけではないので安心してほしい。

 なお、事件の犯人は小沢が演じる番組プロデューサーだった。殺害動機はヒューマン中村がネタ時間を守らなかったから。彼女は自白の中で「知ってる? テレビの仕事ってね、時間が勝負なの」と語る。「私たちはプロとして時間を守りつつ、綿密な打ち合わせをし、シミュレーションを何度も繰り返して本番に挑んでるの。0.1秒だって無駄な時間はないの」と語り続ける。

 このセリフ、なんだか時間が足らず終始急ぎ気味に進行していた今年の『R-1』に対する皮肉のようだ。あるいは、延々と山を走ったり、延々とギターをチューニングしたり、延々と芸人とアナウンサーが小競り合いをしたりと、無駄に思える時間がたっぷりと使われた(そしてそんな無駄が面白さにつながっていた)今回の番組それ自体が、時間に追い立てられ気味だった番組へのツッコミにも見えてくる。いや、ゆりやんがいつもやっていることをやっただけなのだろうけれど。

 サスペンス風のコントが終わると、再びショートネタなどを挟んでエンディングへ。画面には再び排水溝が映った。オープニングとエンディングがつながった格好だが、排水溝をくぐり抜けた先にあったのは、7人のツッコミ芸人たちの写真。そして浮かび上がる「ありがとう」の文字。番組はおいでやす小田の次のようなツッコミで幕を閉じた。

「何がやーーー!」

 わけのわからないものが突然始まり、突然終わった。何がどうなっていたのだろうか。私たちは何を見ていたのだろうか。何に笑っていたのだろうか。また、小沢真珠がコントに登場すると芸人たちから「えぇー!」「いいんですか?」「よく出てくれたな」などと一斉にツッコミが入っていたけれど、彼女はいつまで「あの女優さんがこんなことやってくれるなんて」枠なのか──。謎は尽きない。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2021/09/21 11:39
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