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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 『関ジャム』ボカロ進化の歴史を総ざらい

『関ジャム』ボカロP特集! 初音ミク、ハチ、千本桜、シャルル…ボカロ進化の歴史を総ざらい

「開始1秒で掴む」と「サブスクの弊害」は表裏一体

 この日の番組内容はボカロだけにとどまらず、「DTM(Desk Top Music)」の解説にも及んだ。DTMとはパソコンを使って行う音楽制作の総称だ。

 まず、くじらがDTMを始めたきっかけを明かした。中学時代、軽音楽部のベーシストだった彼はコンテスト用の楽曲を制作。しかし、ギターの弾き語りでメンバーに曲を伝えることができなかったくじらは、パソコンでデモを制作しようとDTMに着目した。そして、その流れで動画サイトへの楽曲投稿を開始したのだ。

「実際、音楽で食べていきたかったので(中略)スタジオに入るのもお金がかかるし、深夜練にもなって体力も削られて、バイトもして。これをいつ売れるかわからないままで続けるのはしんどすぎる。自分1人でやったほうが早いよなと思ったんです」(くじら)

 前回の東京事変特集でKing Gnuの常田大希が「ギターを買うよりパソコンを買え」と言っていたが、図らずもくじらがその言葉を実証した格好だ。

 その後、ボカロ活動を続ける中、くじらは“歌い手”yamaを発見する。歌い手とは「歌ってみた」と題した動画をアップする投稿者たちのことである。YouTubeでyamaを発見したくじらはその歌声に衝撃を受け、TwitterのDMで「僕の曲を歌ってくれないか」とオファーを送信。そして2020年5月、yamaをフィーチャリングした楽曲「春を告げる」が大ヒットした。実は、この曲でくじらが意識していたのは「開始1秒で掴む」というテーマだった。

「TikTokとかサブスクとかYouTubeだと、『違うな』と思ったら開始1~5秒で進んじゃう(スキップする)人が多いじゃないですか。なので、歌から始めて『ほら、いいでしょ?』とわからせたいと思って作りました」(くじら)

 この点は、ずっと筆者も気になっていた。イントロ前にサビを出す形で始まる曲が最近は実に多い。くじらの言う通り、掴みが重要だからだろう。あえて「サブスクの弊害」と言ってしまうが、イントロをじっくり聴きたい旧世代からするとこの傾向は完全にジェネレーションギャップだ。イントロに1分32秒を費やすTM NETWORKの「Get Wild’89」は若年層には考えられないだろうし、B’zの「LOVE PHANTOM」が今リリースされたらあっさり飛ばされてしまう気がする。

 最近の傾向といえば、ゲストの市川紗椰と本間が言及したトラックについても同様。2人のコメントが、完全に我が意を得たりの内容だったのだ。

「(『春を告げる』は)ライブで見てみたいし大きなスピーカーで聴くのもいいんですけど、1人で(ヘッドフォンで)聴いたときこそ“ズン!”と来そうな気がしました」(市川)

最近、スタジオでもiPhoneでミックス確認すること多いんですね。僕は『春を告げる』聴いたとき、スタジオで普通に聴くよりiPhoneで聴いたほうが迫力があって良かった」(本間)

 言葉を選ばず言うと、最近はトラックがスカスカな曲が多い。大きなスピーカーで聴く仕様になっていないのだ。例えば、YOASOBIを初めて聴いたとき、筆者が感じたのは音圧の弱さだった。でも、ヘッドフォンで聴く場合は単調なビートがポコポコ鳴っていたほうが耳に心地良かったりする。あまり音質にこだわらない若年層ならではの音楽なのだろう。でも、大会場でライブ映えしなくても、YouTubeという最大の舞台でいきなり勝負することができる。すごい時代だ。才能があれば、予算がなくても成功できるのが令和である。

 あと今回、最も気になったのは実はゲストの人選だった。3人とも歌い手と組んでヒットを飛ばしたボカロPなのだ。つまり、ボカロPが作った通常のヒット曲を紹介するだけの番組になってしまっている。今もボカロ声に抵抗感を抱くリスナーは少なくない。その感情をひっくり返すには、ボカロ1本で勝負するボカロPの出演も必要だったのでは? この番組内容では「人間の声のほうがやっぱりいい」という結論に着地してしまいそうだ。ボカロP特集は次回も続く模様。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/07/04 22:00
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