庄村聡泰、釈由美子出演のホラー映画『ロックダウン・ホテル』を実観!仏でソースが誕生したわけに思いを馳せる
#釈由美子 #ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染 #ショウムライター
さて、皆様はフランス料理、取り分けソースの歴史について、幾何かの知識はお持ちだろうか?
断っておくが、貴方がこれから読もうとしている当記事は、飽く迄も映画『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』についての文章であるので、ご安心召されます様。暫し料理の話についてお付き合い頂く事とする。
それは所謂ルネサンスの時代、即ち15世紀末まで遡ると言われ、当時のイタリア王女がフランス国王の元へと嫁ぐ事になり、王女の召し抱える料理人達が夫妻へと振る舞った食事が発祥とされている。しかし、ご存知の通り嫁ぎ先のパリは内陸。南の地中海や西のノルマンディー海峡で採れる魚介類の鮮度を当時の保存技術では保つ事が出来ず、苦心の末に編み出された文化が、輸送の過程ですっかり劣化してしまった食材の味と見た目に彩りを与える、ソースであった。
当映画を鑑賞するに当たっての予備知識として必要であると筆者が判断したのは上記であり、そしてそれを以てのオフィシャルHP閲覧、その後に映画本編、と言う流れを強く推薦したい。
当映画は2019年1月にカナダのモントリオールにて撮影されたとの事だが、その時には無論コロナのコの字もこの世には存在しておらず、出来上がった作品と世界の現状とのリンクに言い知れぬ恐怖を感じているとは主演(をさも務めたかの様にオフィシャルHPでは書かれて”しまって”いる)、ではない、釈由美子さんの弁であるが、一つのホラー映画として本作を語るに当たっては、そのトピックス意外に特筆すべき点は何もない。
殺人ウイルスが引き起こす阿鼻叫喚の地獄絵図も、釈由美子さんの衝撃の熱演も、じっくりとじっとりと展開される、のだが、”それだけ”なのだ。
出来る限りの予備知識を省くと言う、作品鑑賞の一つのセオリーに則って本編を鑑賞した後にオフィシャルHPを閲覧した筆者は、そこで改めてソースの歴史について思いを馳せたのである。
要するにソースの歴史とは”どうしようもない物をどうにかする為にはどうしたら良いのか”と言う精神の元に生み出された文化であり(15世紀末に於ける地中海からパリまでの道程を鑑みるに、その食材は現在の食文化並びに保存技術からすると、どうしようもない代物の類であったと仮定してもそう、乱暴な物言いではないだろう)、”どうしようもない映画をどうにかする為にはどうしたら良いのか”と言う精神の元に生み出されたであろうオフィシャルHPが出来るまでの苦心、宣伝文句の苦心、釈由美子さんの苦心、について、筆者は胸が張り裂けんばかりの畏敬の念を抱くに至ったのである。
こんなにも本編以上にオフィシャルHPについて語りたくなる映画が他にあるだろうか(多分いっぱいある)。
映画のみならず、海外由来のエンタメが日本人向けにモディファイされて世に放たれる過程の全てには宣伝マン、コピーライター、演者、その他大勢の人、人、人、が関わる事となる。自らが関わった作品に対する責任。その矜持足るや。数多の受け手の内のたった一人である筆者は、当映画に対する宣伝と広告への敬意を評すると共に、エンディング曲だけはやたらカッコ良かったなと、音楽配信サービスの検索バーに曲名を打ち込んだのであった。
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