エキゾチックなタイ版かた焼きそば“あんかけのスコール”で微笑みがあふれ出す!
#タイ #新宿 #かた焼きそば
「あんかけラーメン」の意味とは……
タイのフードコートを彷彿とさせるプラスチック皿で配膳。漏れ出る現地感に心躍る。
具材は鶏肉、飾り切りしたニンジン、フクロタケ、千切りのタケノコと広東菜だろうか。揚げ麺はライト目の中細麺、あんかけに関しては一般的なかた焼きそばに比べてとろみが極端に少なくシャバシャバしている。グレービーソースを使用しているせいか、匂いも一線を画す異国情緒の香りだ。
と、その刹那、スコールかと思うほどの猛烈な大雨が新宿の街を水浸しに。お天道様のニクい演出に思わず笑みがあふれる。
時を同じくして、皿の上でも異変が起こっていた。なんと、あんかけのスコールが揚げ麺をものすごい勢いでヒタヒタにしているではないか! 雨宿りの場所を求めて駆け抜ける窓外のサラリーマンのように、急いで口内に避難。
スコール……そう、それはワガママな女神が散りばめた宝石。
メニューに日本語で記載されていた「あんかけラーメン」の意味が今となってはよくわかる。タイ人にとってはかた焼きそばというより伊府麵に近い感覚なのかもしれない。
伊府麵とは、小麦粉を水ではなく卵で練った麺(全蛋麺)を油で揚げたもの。そのまま食べるのではなく茹でたものを食す、広東人にはお馴染みの麵である。中国は清の乾隆帝時代に伊乗紋という高官が考案し、インスタントラーメンの原型ともいわれている。
カチカチの揚げ麺が好みだが、これはこれでクセになる食感だ。
旅先で偶然見つけた現地でしか手に入らないカセットテープのような、聴けば聴くほどその魅力から抜け出せなくなる、複雑な味わいが特徴のタイ料理らしい中毒性の高い味。とはいえ、辛味は特に感じないので、苦手な人でも安心して食べることができる。
もちろん、冒険したい人は卓上調味料としてタイ料理には欠かせないナンプラー(魚醤)、ナムターン(砂糖)、プリックボン(唐辛子)、ナムソム(酢)で自分好みにカスタマイズ、どう転んでも混沌確定である。
あれほどまでに降っていた雨は、食べ終わる頃にはピタリとやんでいた。きっとあれは、かた焼きそばを美味しく食べるための神の恵みだったのかもしれない。
<INFO>
・タイ国料理 ゲウチャイ 新宿店
住所:東京都新宿区新宿3-21-7 東新ビル2F営業時間:11:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:無休(年末年始を除く)
※江東橋店は「ミークローブ ラッナー ガイ」の提供なし
〈連載「かた焼きそばのフィロソフィー」の過去回〉
第1回「海老天ベンツも潜む圧倒的な情報量の“揚げ日本そば”スタイル」
第2回「中野坂上にも“夢と魔法の王国”があった! 豚レバーとピリ辛餡が刺激的な『ミッキー』のかた焼きそば」
第3回「椎茸・ザ ・ボンバーの一点突破! “映え”だけじゃない極端かた焼きそばの滋味と享楽」
第4回「インド、アメリカ、中国が同盟を結んだ! フォークで食べる常識破りのジャンクかた焼きそば」
第5回「創業90年の町中華で味わう極上“アンビエント”かた焼きそばの宇宙と無常観」
第6回「まるでかた焼きそばのサラダ! 立川で100年以上続く福来軒の懐かしくて新しい逸品」
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