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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】 vol.642

令和日本は「鎖国」状態が続いたままだった!? 難民申請をめぐるドキュメント『東京クルド』

入管がかたくなに難民申請を拒む理由

令和日本は「鎖国」状態が続いたままだった!? 難民申請をめぐるドキュメント『東京クルド』の画像3
品川にある東京出入国在留管理局の収容施設。収容者たちは精神的にも追い詰められている。

 スリランカ人の女性ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋の入管で非人道的扱いを受けて病死した事件は、今年の3月に起きたばかりだ。入管は自殺者が多いことでも知られている。いつまで続くか分からない収容生活は、刑期が分かっている刑務所で過ごすよりも精神的にきついと言われている。本作でもラマザンの叔父・メメットが長期収容中に体調不良を訴えたものの、家族が呼んだ救急車が入管職員によってそのまま帰されてしまう様子が映されている。日本で難民申請しても認められずにいる外国人たちは、人権すらも認められていない日々を過ごしている。

 本作のプレス資料、また劇場で販売されるパンフレットには、渡邊彰悟弁護士による「映画『東京クルド』に寄せて」というレビューが掲載されており、その中で引用されている法務省の研修教材「出入国管理及び難民認定法Ⅳ」(1988年)の一節には驚きを覚える。

【日本というのは、そもそも、国土狭小・人口過多・資源貧困・単一民族なのだから、難民受入の基本的な条件は整っていないのは当然である。また、我が国は日本人だけで非常に高度の和と能率が維持される国に仕上がっているのだから、自ら好んで外国人を招き入れてこの調和のとれた環境を破壊することは避けなければならないー】

 現在はこの一節は研修教材から削除されているらしいが、法務省の外郭組織である入管が、難民申請をかたくなに拒んでいる理由が分かる。入管職員たちの基本的な姿勢は、1988年から変わらないままなのだ。いや、日本はいまだに鎖国状態が続いていると言えるのではないだろうか。

「僕も渡邊弁護士のレビューを読んで驚きました。でも、僕は入管を糾弾するためにこの映画を撮ったわけではないんです。入管職員が口にする『帰ればいいんだよ、自分の国へ』という言葉は、日本人の多くがそう思っていることじゃないでしょうか。『外国人は危ない人たちだ』と考える日本人のメンタリティーの問題だと思うんです。日本という国の総意、国の方針に入管職員たちは忠実に従っているだけなんだと僕は感じるんです」(日向監督)

 日向監督は在日シリア難民の家族を追った『となりのシリア人』(16)が日本テレビ系で放映された他、お笑い芸人・村本大輔に密着取材した『村本大輔はなぜテレビから消えたのか?』(21)がBS12で放映されている。お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」として2013年の『THE MANZAI』(フジテレビ系)で優勝を果たし、テレビ番組に引っ張りだこだった村本だが、原発問題などの社会派ネタを扱うようになって、テレビ出演は激減した。2020年のテレビ出演はわずか一本だった。

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