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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 前田日明と「リングス」の曳航(4)
リングス旗揚げ30周年記念 短期集中連載『天涯の標』

【格闘王・前田日明と「リングス」の曳航 Vol.4】幻のヒクソン戦、奇跡のカレリン戦、そしてPRIDEとの相剋

「日明」という名前

 前田がそうしたロシアの風土に惹かれるのはなぜか。

 〈 俺の母方のお爺さんの家って李朝(かつて朝鮮半島に実在した王朝)の宮廷武官だったんです。閔妃暗殺事件(1895年、李朝の王妃が宮廷内で暗殺された事件)のとき、お爺さんのお父さん、ひい爺さんが関わってたらしい。そんで、責任を取らされて野に降った。槍を持って抗日ゲリラとかやったんですけど。食糧調達のために村に下りていったりするじゃないですか。そのうち、強盗呼ばわりされて、だんだん嫌になった。

 お爺さんの代になって日本に来ます。「閔妃暗殺に関わった日本の右翼を殺すんだ」とか言って、やって来たんですよ。そういう変な家柄の血も入ってるんで(笑)。

 俺の名前、「日明」はその母方の爺さんがつけてくれました。カッチンコッチンの儒教主義者ですから、娘の子供、外孫に名前をつけることなんかないんです。男尊女卑どころじゃない。こんなこと言ったら、お爺さんに怒られるかもわかんないけど、彼にとって女性は人間じゃないんです。

 母親は15人兄弟。男は2人であとは全部女です。だから、お爺さんには娘がいっぱいいて。外孫も大勢いた。その中で、なぜか俺にだけ名前をつけてくれた。

 新生UWFのころ、近い関係にあったシンサック・ソーシリパン(元キックボクサー、シンサック・ビクトリー・ジム会長)さんの奥さんが占いをやっていて。社長の神(新二)や専務の鈴木(浩充)は興行の開催日程なんかを彼女に占ってもらってました。いつの間にか選手も彼女に影響されて。髙田や宮戸(優光)は彼女に「改名しろ」と言われて従ったんです。

 俺も「字画が悪いから変えろ」って言われたんですけど。結局、変えませんでした。名前は関係ありませんから。〉

 前田がかつて追い求め、得られなかった東アジア的な家族のつながり。リングスネットワークの中で形を変えて実現したのかもしれない。そういえば、シベリア出身のカレリンも自らを「アジア人」と位置づけている。

 〈 人に対する傷は癒されましたよ、リングスで。いろんな意味でね。〉

(Vol.5に続く)

■前田日明の最新著作
『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』

日本を憂う最強・最後の論客、前田日明降臨!!! 日本が抱える数々の問題、尖閣、竹島、コロナ、南海トラフなどを鋭い舌鋒で快刀乱麻! 前田日明の憤りのすべてが詰まった問題の書。(定価1400円+税) 
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片田直久(ジャーナリスト)

1968年宮崎県日向市生まれ。出版社、編集プロダクション勤務を経て、現在はインディペンデントとして政治や医療、経済、抵抗文化などの分野で企画・取材・執筆・編集に携わる。渡世上の師は作家・大下英治。2020年よりYouTube「前田日明チャンネル」で合いの手を担当。現在、「リングス」について鋭意取材敢行中。日本ジャーナリスト協会運営委員。著書に『タモリ伝』(コア新書)。

かただなおひさ

最終更新:2021/07/05 11:09
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