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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 前田日明と「リングス」の曳航(4)
リングス旗揚げ30周年記念 短期集中連載『天涯の標』

【格闘王・前田日明と「リングス」の曳航 Vol.4】幻のヒクソン戦、奇跡のカレリン戦、そしてPRIDEとの相剋

ロシアでの熱い握手

ブランコを秒殺後、相手を称えるコピィロフ(1999年12月22日)

 〈 でも、あの大会って満員になっても赤字やったんですよ。あのころ、PRIDEと選手を取り合ってた。だから、WOWOWがもう1年頑張ってくれたら、PRIDEを潰せたんです。でも、できなかった。〉

 KoKトーナメントの中でアンドレイ・コピィロフ(リングス・ロシア)が柔術世界王者カステロ・ブランコ(ブラジル)を秒殺。引退に追い込んだ。リングスの技術が世界的な水準であることがまたも証明される。前田が立てた「爪痕を残す」目標は十分に達成できた。

 〈 ハン(ヴォルク・ハン、リングス・ロシア)やコピィロフがリングスに初めて出てきたとき、二人はピークを過ぎていた。コピィロフは現役を引退してましたから。彼は全ソのスポーツサンボの大会で4回優勝してます。ハンは1回だけど。二人がリングスに出てきた91年に今の総合があったとしたら、チャンピオンになれてますよ。〉

 KoK以降、リングスマットは確かに活性化した。だが、前田の証言通り、PRIDEとの選手争奪戦も激化。世界中から発掘した強豪たちも多くは流出していった。

 〈 あれもしょうがないんです。ギャラが2倍ぐらいだったら、人間関係で抑えられます。これが5倍、10倍になってきたら、どうしようもなかった。吹っかけられても動かなかったのがコピィロフとハンです。

 ロシア人との関係って、俺の中ではどこか劇画チックなんですよ。彼らって一見、日本人にとってはあんまり親近感がない。国としてのロシアも覇権主義的で冷たいところ、残酷なところがあります。でも、あの国に住んでいる一個一個の人間って、日本人とすごく合うと思うんです。ロシア人には一生の友達になれるような人間が多い。彼らには秘めた熱さがあります。

 でもね、仲良くなるまでに時間がかかる。2~3年の間はじいっと見てるんですよ、こっちを。「どういう人間なんかな」って。約束を守れるのか、破っても平気なのか。人を裏切ることができるか、できないか。じっと見てる。〉

 前田は約束を守り、裏切らなかった。

 〈 ロシアで大会をやったときのことです。全部終わったあとに俺、ある部屋に呼び出されたんですよ。打ち上げのパーティーをやってるときに、「別室でちょっと用があるから。来てくれ」って声を掛けられた。行ってみたら、リングス・ロシアを中心に主だった選手が全部そろってる。何を言うのかと思ったら、こんな話だった。

「ありがとう。君には感謝しかない。おかげでこうして無事に大会もできた。ロシア人として、スポーツマネージメントを学び、ビジネスをやり遂げることができたんだ。これを大事にして、育てていかなくてはいけない。本当に才能のあるロシア人の選手を育てていくこともできる。これを一から教えてくれたのはマエダ、君だ。本当にありがとう」

 ほんで、「みんなに握手しろ」って言われた。

「いや、助かったのはむしろ俺だ。ロシアの選手がいなかったら、リングスもこんなに盛り上がらなかった。お礼を言いたいのは俺のほうだよ。ありがとう」

 そう言いながら、一人一人と握手していきました。

 ロシアってよくも悪くも昔風の男社会。日本で言えば、1950年代ぐらいの熱い男の世界ですね。

 西欧社会、白人社会なのに妙に男尊女卑だし。と言っても、奴隷的な女性蔑視とは違う。「男同士しゃべってるときは女は黙ってろ」みたいなね。そういうところがあるんです、ロシアって。〉

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