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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 前田日明と「リングス」の曳航(4)
リングス旗揚げ30周年記念 短期集中連載『天涯の標』

【格闘王・前田日明と「リングス」の曳航 Vol.4】幻のヒクソン戦、奇跡のカレリン戦、そしてPRIDEとの相剋

成田で連れ去られたヒクソン

UWF時代の前田と髙田(写真=原悦生)

 〈 WOWOWと折衝して、ギャラも出してもらえることになりました。

「ヒクソンが『WOWOWだったら、契約しない』とごねるんだったら、第三者を立てるよ」

 そこまで言ってくれた。会場をはじめ、いろいろ準備しました。そのころ、ヒクソンが自分のブランドを立ち上げたとかで。記者会見を開くために日本に来ると。そのときにこっちも記者会見して発表しようと決めました。「ルールは髙田のときと全く同じでいいよ」と話し合っていた。

 で、ヒクソンが成田に着いたら、いきなりPRIDEの連中が来て、さらっていったんです。ほんで、さらにびっくりしたのは、髙田が「第2戦をやる」と(苦笑)。

「だったら、髙田、言えよ」って。

 それで2回も騙されたような気になって。何かもうアホらしくなったんです。

 カレリン戦ではいろんな奴が動いてくれていました。ヒクソンとの交渉中はそいつらにも「ちょっと待ってくれ」「ちょっと待ってくれ」って言わなきゃいけない。それも申し訳なかった。「早く決めないとできなくなるよ」ってさんざん言われたのに待ってもらった。髙田の再戦が発表されて、何か、すんげえアホらしくなったんです。

 でも、ヒクソンとの第2戦の前、ちょっと考えました。

「どうなんかな。また十字(腕十字固め)かなんかでパッとやられちゃうのかな」

 って思った。十字の防御でも教えてやろうと思ったんだけど。

 髙田が「何を信じてヒクソンと闘うのか」っていったら、金のためなんですよ。ヒクソンに高額のファイトマネーが出るから、その分、自分ももらえる。「どうせ負けたんだったら、金を取ろう」と思ったんじゃないですか。そういうことを言う人がいました。それを聞いて、「まあ、そうだな」と思っているうちにだんだん嫌になってきた。いろいろ考えたら、アホらしくなってきて教えるのはやめました。何にもやらなかったら、案の定また十字で負けた。

 俺は「人間・カレリン」の凄さや、世界的な評価をみんな知ってましたから。「ヒクソンよりも、カレリンを優先したほうがいいや」と思った。で、カレリンと試合をしたんです。〉

 アレキサンダー・カレリンはロシアの「英雄」である。ここでいう英雄は比喩ではない。ロシアには「英雄」なる称号が実在する。連邦政府から市民に授与される最高の栄誉だ。カレリンはそれを手にしている。

 グレコローマンレスリング130キロ級で1988年、1992年、1996年とオリンピック3大会連続で金メダルを獲得。圧倒的な強さを誇った。

 1987年から2000年まで国際大会で13年間無敗。大会76連勝の記録を持つ。その間に世界選手権9連覇や欧州選手権10連覇も達成。公式試合での連勝記録は300にまで及んだ。前人未到とも称された大記録ゆえに、日本では「霊長類最強の男」の異名で通っている。

 そんな規格外の選手をプロのリングに上げ、リングスルールで闘う。実現できたならば、奇跡であり事件である。

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