森田望智vs恒松祐里、女優たちのバトルが熱い! 『全裸監督 シーズン2』いっき観レビュー!
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『全裸監督』は村西伝説を美化したドラマなのか
口八丁・腰八丁ぶりで、アダルト界の天下を獲った村西だが、シーズン1の終わりにトシ(満島真之介)と袂を分かったのに続き、シーズン2ではビニ本時代から苦労を共にした川田社長(玉山鉄二)、さらにヘアメークの順子(伊藤沙莉)らが次々と去っていく。“逆ダイエット”で全身ぶよぶよ体型になった山田孝之は、村西をとことんかっこ悪く演じる。絶頂からどん底へ。セックスの快感曲線にも似た村西の人生は、俳優として円熟期を迎えた山田孝之にとって最高に演じがいのある対象だったに違いない。
本作のモデルとなった村西監督は、山田孝之に直接会う機会があり、「こんな役をやったら、仕事が来なくなるんじゃないの?」と心配して尋ねたそうだ。このとき、山田は「僕は役者で、CMタレントじゃない。これで仕事が来なくなっても、かまいません」と答えている。プロの俳優なら、好感度よりも大切なものがある。
近年の山田孝之は、インディペンデント映画『デイアンドナイト』(2019年)ではプロデューサーとして脚本づくり、キャスティング、資金集めに奔走。今年公開されたオムニバスコメディ映画『ゾッキ』ではプロデューサーだけでなく、監督デビューも果たし、予算も時間もない日本映画の貧しい状況を変えようと努めている。日本の芸能界における俳優の立ち位置を、山田孝之は作品ごとに更新してみせている稀有な存在だ。彼が俳優仲間からリスペクトされているのもうなずける。
また『全裸監督』はシーズン1に続き、シーズン2でも、スタッフとキャスト全員が「ハラスメント講習」を受けるなど、米国で始まった「リスペクトトレーニング」を日本の撮影現場でいち早く取り入れたことでも知られている。複数の脚本家たちによって練られたストーリーも含め、『全裸監督』が日本のTVドラマ界と映画界に与える影響は少なくないだろう。いや、変わらなければ、おかしい。
『全裸監督』は女たちの性を商品化し、搾取することで富と名声を手に入れた村西監督の逸話を美化して描いていると、ジェンダー的視点から批判する声はシーズン1でも上がっていた。しかし、村西監督を単純に美化したドラマではないことは、このシーズン2を観ると分かる。山田孝之演じる村西に、第6話でこう語らせている。
「アダルトビデオも、お前ら女優も商品なんだよ。今まで、どれだけいい扱いを受けたか考えてみろ。ブランドもののバッグや洋服が、好きなだけ手に入った。それはお前らが商品だからだよ」
商品扱いされることに憤慨する女優たちに、村西は露骨な言葉を浴びせる。数々の女優たちを輝かせてきた村西マジックが消滅した瞬間でもある。その結果、AV界の帝王として君臨した村西はひとりぼっちとなる。
バブル経済は、土地も、人間も、時間も、すべてを商品に変えてしまった。そして、この国はいまだにバブル崩壊後のどん底から這い上がることができずに、高度経済成長時代のシンボルだった「東京五輪」という幻想にすがりつこうとしている。昭和から平成という変動期を振り返る上で、村西とおるという男ほど「反面教師」にふさわしい人物はいない。
■ Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』
Netflixにて、全世界独占配信中 https://www.netflix.com/jp/title/80239462
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