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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 力強さを瞳で伝える『シコふんじゃった』の凄み
宮下かな子と観るキネマのスタアたち第15話

本木雅弘が、単位と引き換えに廃部寸前の相撲部で奮闘! コミカルな展開から一点、力強さを瞳で伝える『シコふんじゃった』の凄み

本木雅弘が、単位と引き換えに廃部寸前の相撲部で奮闘! コミカルな展開から一点、力強さを瞳で伝える『シコふんじゃった』の凄みの画像1
イラスト/宮下かな子

 みなさんこんばんは、宮下かな子です。

 全国的に梅雨入りしましたね。雨といえば、雨女雨男、という言葉をよく耳にします。きっと皆さんにとっても身近な言葉なのではないでしょうか。私のお仕事は特に天候に左右されることが多くあって、延期になったり雨待ちもしばしば。何度か暖かい地域でグラビア撮影をしているのにもかかわらず、常に天候の心配をすることになる私にとって、これはちょっとした呪いのような言葉。本降りの雨というわけではないですが、いつも曇り。時々晴れ、時々雨。晴れ女ではないことは確かです。海外にこの言葉はないみたいなので、きっと雨の日が多い日本ならではの言葉ですよね。

 毎回この話題になると「その人の都合で天候が変わるわけないだろう!!!」と思うのですが、心のどこかでやっぱり意識してしまうもの。実は先日も、天候に恵まれない撮影があって、「私ってついてないなあ……」とつい思ってしまったのですが、夕方少し雨が止んだタイミングで撮影した時、その日1日の感情が、作り手側の要望にぴったりハマったんです。天候の影響でとても大変な1日でしたが、あの感情を出せたのは、天候が悪く、「ついてない」の積み重ねがあったからで、それを仕事の場で活かせたのはとても良い経験だったなと思えました。

 こんなふうに、人生、予想外なことが自分のプラスになったりするもの。今回ご紹介する映画も、予想外なことが好転し、人生が前向きに動き出していくお話。周防正行監督『シコふんじゃった』(大映1992年)をご紹介します!

 公開当時は大相撲黄金時代。周防監督のテンポ感とユーモアセンスに何度も笑わされ、がむしゃらに汗水流す姿に勇気を貰える、青春ハートフルコメディです!

〈あらすじ〉
 単位を取得するため穴山教授(柄本明)のもとを訪れた秋平(本木雅弘)は、単位と引き換えに、1日だけ相撲部員として大会に出場することに。唯一の部員の青木(竹中直人)と集めた、春男(室井誠明)田中(田口浩正)スマイリー(ロバート・ホフマン)と共に相撲稽古の日々が始まる!

 日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、報知映画賞等、数々の賞を総なめにし、第66回キネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得した今作。ピンク映画から監督デビューした周防監督は、この作品の後も『Shall we ダンス?』(1996年大映)『それでもボクはやってない』(2007年東宝)とヒット作を生み出しています。主演の本木雅弘さんも当時26歳、俳優としての着実な一歩となった作品なのではないでしょうか。 

 本木雅弘さん演じる主人公・秋平は、大学4年生。授業は友達に出席を取ってもらっていて単位はギリギリ。就職は父親のコネで決まっている、ずる賢いちゃっかり者です。ある日、単位取得のため卒論の指導教授でもある穴山教授のもとを訪れると、「相撲部の試合に出場してくれたら単位を渡す」と、提案されます。この大学の相撲部は昔、穴山教授が学生横綱として成績を残していたのですが、年々部員が減り、今年の団体戦に出られなかったら廃部になる危機にまで迫られていたのです。この交換条件を渋々受け入れた秋平は、まず団体戦に出場する部員数を揃えるため、生徒を勧誘することに。

 なんとか団体戦に必要なメンバーが揃うのですが、そのメンバーがもう、度を越したへなちょこぶり! 唯一の部員である青木は、相撲への愛は強いが本番になると下痢になり、一勝もしたことがない小心者。秋平の弟の春男は、相撲向きではない細身な体型でアイドル的な存在。田中は豊かな体格からスカウトされたものの、まともに相手を見れない程の気弱な性格。

 これでもかというほどの弱小メンバー、このキャラクター性が最高なんです。

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