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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 力強さを瞳で伝える『シコふんじゃった』の凄み
宮下かな子と観るキネマのスタアたち第15話

本木雅弘が、単位と引き換えに廃部寸前の相撲部で奮闘! コミカルな展開から一点、力強さを瞳で伝える『シコふんじゃった』の凄み

羞恥心丸出しの大学生から一転する演技に感動

 大した練習もルールも知らないまま大会に出場した4人は当然全敗。

 この大会での様子で面白かったのが、それぞれ大きなバスタオルを腰に巻きつけ、お尻が見えないように隠しているところ。小中学生のプールの時間の着替えで、私もそんな羞恥心があったなぁと、懐かしい思い出が蘇ってきて。

「そんなに恥ずかしがらなくても誰も見てないわよ、ささっと着替えなさい」と、当時の自分に言ってあげたい言葉が、この大の大人の男達にそっくりそのまま言いたくなってしまい、それが可笑しくて思わず吹き出してしまいました。

 こんな羞恥心丸出しで完全に周囲から浮いている相撲部を見たら、そりゃあ強豪校に「お前ら相撲舐めてんのか」と言われてしまうのも無理はありません。

 本来穴山教授との約束では、この大会に出場するだけで良かったものの、秋平は大会後非難してくるOBメンバーを前に、勢い余って勝利宣言をしてしまいます。この発言を機に、メンバー全員が再び大会を目指すことになるのです。

 物語が動き出すきっかけとなるこの場面、本木雅弘さんのお芝居がとても印象的。OB達を前に突然スクっと立ち上がり、「勝ちゃいいんだろ勝っちゃ勝ってやろうじゃないか勝ってやるよ絶対勝ってやるよなぁみんな!」と捲し立てるような台詞の吐き出し方の迫力ときたら! 

 こういう勢い余って大きなことを思わず口にしてしまう場面って、よく描かれる物語の流れだと思うのですが、あまりに凄い本木さんの勢いは、観ているこちらまで呆気に取られるほど。なかなかこの勢いを出している役者さんは見たことがありません。

 普段のフワフワした性格の秋平とのギャップもあり、そんな秋平が自分の意思を示す重要な場面であることもさることながら、やはり本木さんの役者としての凄みを感じさせられる場面です。

 加えて、この場面でとても素敵な演出だなぁと思ったのが、秋平の目配せを丁寧に見せているところ。OB達に責められてすすり泣きをしている隣の青木を見て、秋平はこの発言をしてるんですよね。文句を言われたことに自分自身がカッとなったからではないんです。

 そこに、秋平の優しさが感じられ、キャラクター性が見えるし、個人戦ではなく、団体戦である学生相撲ならではの良さも感じられて。仲間と共に戦うってとても心強くて尊いことだなぁ、と、じわじわ心に染みてきました。その秋平の勢いに対して他の部員達が呆気に取られやる気がなさそうなギャップがこれまた良く、周防監督のユーモアセンスが感じられ、ニタニタと笑みが溢れます。

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