静岡県知事選でリニア反対派が勝利 JR東海「リニア開業10年遅れ」の悪夢
#静岡県 #リニア #静岡県知事選
6月20日に投開票が行われた静岡県知事選で、リニア工事に反対する現職の川勝平太氏が当選。JR東海が目指すリニア中央新幹線(品川~名古屋)の2027年開業が、極めて不透明な状況になってきた。
リニア中央新幹線は、東京と大阪を最高速度約500kmで結ぶ壮大な計画。所要時間は東京(品川)~名古屋間が40分、東京~大阪間が67分で、開業は東京~名古屋が2027年、名古屋~大阪が2037年を予定している。しかし川勝氏は、リニアのトンネル工事で県民の生活を支える大井川の水量が減るとして、工事の中止やルート変更などを訴え、4選を果たした。
「日本のみならず世界が注目するリニアですが、静岡県民にメリットはありません。大井川の水量の問題もありますが、そもそもリニアは通過するだけで駅がない。県知事選では、対立候補もルート変更を視野に入れると訴えましたが、推薦する自民党はリニアを推進してきた立場だけに説得力ゼロ。川勝氏はリニア問題だけで選挙に勝ったようなもので、リニア反対で県民は一枚岩です。
その背景には、静岡県民のJR東海に対する根深い怒りがあります。というのも、東海道新幹線のルートは静岡県を東西に貫いていますが、『のぞみ』は県内を素通りで、静岡県民が乗れるのは『ひかり』と『こだま』だけ。のぞみに対し、県知事が『通行税を取る』と発言したこともあります。
今回の当選で川勝県政はまた4年続きますが、これだけ支持されれば、川勝氏はリニアで譲歩する理由がない。4年間工事がまったく進まない可能性さえあり、すでに2027年開業は絶望的。5年、10年単位で開業が遅れても不思議ではありません」(鉄道業界に詳しいフリージャーナリスト)
国家的なプロジェクトが1つの県民の意向でストップする状況は異例だが、静岡県民が「貧乏くじを引く必要はない」と思うのは当然。ただ、巡り巡って静岡県民は矢面に立つことになるかもしれない。
「JR東海はここ数年、インバウンド需要などで大儲けしてきましたが、コロナで需要が激減。2021年3月決算では2000億円以上の赤字を出し、前期の約4000億円の黒字から壊滅的に悪化しました。今後、仮にコロナが収束しても、出張をリモートで済ませる動きは止まらないでしょうし、外国人観光客が戻ってくるのは数年も先の話。“この世の春”は終わりです。
JR東海はかつてリニアの運賃について、『東海道新幹線より1割高い程度』との試算を示しましたが、工事が遅れれば遅れるほど建設費用は上がり、それは当然運賃に転嫁されます。そうなれば乗客の足は遠のき、建設費回収の日も遠ざかる。JR東海は“建設費はすべて自社持ち”という姿勢ですが、工事が遅れに遅れて国に泣きつき、税金投入という最悪のシナリオもあり得ます。
そうなると、JR東海と共に静岡県民に対しても、全国民からの怒りが殺到することになるのは間違いありません。静岡県は産業が発達していますが、観光への依存度も高い。あまり頑なにリニア拒否を続けると、手痛いしっぺ返しをくらうことになるのでは」(リニア問題を追い続けてきた週刊誌記者)
川勝氏も、静岡県と県民が日本中から疎まれる状態は避けたいはず。振り上げた拳を下ろし、現実的な着地点を見つけられるかどうか。全国から注目される状況は続きそうだ。
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