『家、ついて行ってイイですか？』松本伊代を生きる糧にする男性。難病宣告されても“親衛隊隊長”として人生を全うしたい

てんかんを持つ娘と“内緒の買い物”

　墨田区の駄菓子店で番組が声を掛けたのは、35歳の女性と8歳の女の子の母子だった。彼女には5人の娘さんがいて、一緒に買い物に来ている女の子は四女だという。

ママ　「内緒の買い物なんですけど。お姉ちゃんたちには買い物に来ているのは内緒で（笑）。今日はこの子と内緒で楽しいことをしようねって約束をしていて、先週は砂場で遊んだよね」
四女　「うん」

　ご自宅に到着すると、そこは3階建てのビルみたいな家だった。最高！　ビッグダディのような生活を想像していたけれど、少し違うみたいだ。実は、この家はNPO法人の子育て広場として活用されており、たくさんのお子さんを自宅内で見ているらしい。女性は保育士の資格を持っているし、同居する母親も保育士として子育て広場を切り盛りしている。保育士家系なのだ。

　ちなみに、ご自宅で共に生活するのは計11人。みんな、家族だ。ご夫婦と5人の娘さんに加え、ご両親と弟、祖母も同居している。女性とご主人の出会いは高校時代に遡る。高3のバレンタインに交際をスタートし、卒業後に進学した専門学校の入学式の日に長女の妊娠が発覚したとのこと。それからは、あれよという間に5人の子どもを授かった。男性陣の肩身の狭さは想像に難くないが、こんな家で育てばコミュ力の高い子に育つのは間違いないだろう。しかも、みんな美人さんである。

　こんな仲睦まじいご家族の中、なぜ特別に四女とだけ“内緒のお出かけ”をしていたのか？

「実は（四女が）てんかんっていう病気で、それの定期健診日だったんです」（ママ）

　急に発作が起きると階段から落ちてしまったり、車の運転ができないなど色々な制限がかかることもある病気だ。薬を飲んで治すか、薬を飲み続けながら病気と一緒に生きていくか。現在の四女はそういう病状のようだ。彼女が発症したのは昨年の10月だという。

ママ　「急に（四女が）『おばあちゃんっていつ死んじゃうの？』って話をし始めて、『いや、おばあちゃんが1番最初に死ぬとは限らないよ』と言ったら『明日、私が死んじゃうかもしれない』とか言い出して。その日の夜は私の隣で寝てたんですけど、明け方に痙攣が起きたので。ビックリしたよね。そんなことってあるんだ……って」

　もしかして、四女が予知をしたのか……？　いや、そんなことではないはずだ。心因性で起きた発作なのか、ママのいないところで1度発作を経験していたのか？　とにかく、それから四女はママと一緒に寝るようになった。

「姉妹が5人もいるので、あと私も仕事をしていると1人ずつの時間が全く取れなくて。病気のおかげで2人で過ごせるし、健診日は内緒のお菓子も買えるしね。そういう楽しいことがあるんだよね、2人のときにね。だから、いい時間だよね、この病気のね。楽しいことに全部変えてあげたい」（ママ）

　明るくて優しいママだ。「定期健診日を楽しい日に」、素晴らしい考え方だと思う。母親って凄い。そして、そんな2人の“内緒の買い物”を他の姉妹は理解しているように見えた。

「本当は、病気は大当たり。病気としてはバツだけど、病気をなくしたら大当たり。100人に1人の病気だもん。公園連れて行ってくれて鬼ごっこできるから、大当たりだなって（笑）」（四女）

　賢くて明るい子だ。つらいこともプラスに変える前向きな考え方である。8歳にして達観！　そうこうしているうちに、高1の長女が学校から帰宅した。スタッフは姉妹をまとめる彼女に話を聞いた。よく見ると家の壁にはボコッと穴が開いていたし、元気すぎる妹たちに目配せするのは大変ではないのか……？

長女　「いや、全然大丈夫です。シスコンなんで楽しいです（笑）。（四女）本人が最初、全然薬を飲まなくて、それでみんなで圧をかけて。自分はそういう病気はなかったので。しかも、自分より小さい妹だったので心配だったんですけど、でも、姉として気に掛けなきゃいけないなと思って」

ママ　「（家族が）いっぱいいて良かったなと、大変なときこそ感じます。周りからは『兄弟が多いって大変だよね』って、たぶんそういうところしか見えてないと思うんですけど、実際は大変なときのほうが家族や子どもがいるってことがすごいことだなと思います」

　ママの明るい性格が娘さんたちにちゃんと引き継がれていて素敵。そして、母娘で病気にポジティブに向かい合う姿を見て、本当に多様性の時代になったのだと思った。何から何まで想像を超えるご家族だ。

寺西ジャジューカ（芸能・テレビウォッチャー）

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、（昔の）プロレス系。『証言UWF』（宝島社）に執筆。

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