もう中学生が貫く、平場の手数論。タブーを可能にしたのは500冊のネタ帳とセンスがものすごい小物のストック
#もう中学生
とりわけ賞レースにおける漫才では「制限時間内にどれだけのボケを入れられるか?」を重視する手数論という考え方が存在する。これをそのまま平場に持ち込むとどうなるか。おそらく、ただのスタンドプレーになる。バラエティ番組(特に現代の)はチームプレーだ。なのに1人でボケの数を競っていたら、その芸人は村八分が必至だろう。
手がないわけではない。手数論を貫くなら、他の共演者から「こいつなら仕方ねえな」と思わせることが必要。そこで、もう中学生である。
ラジオのオープニングトークに10以上の話題をぶっ込む
もう中に対する期待値の高さは、皆さんもご存知だろう。多くの芸人から「今年大ブレイクする」と言われる2021年のキーパーソンだ。
基本的に、この人がひな壇トークに参加することはあまりない。周囲から一目置かれる現状が作用し、本人の思い通りにできる不可侵な空間が与えられる機会が多い気がする。そんなシチュエーションにおける、もう中の手数は異常だ。
5月末より彼は『芸人お試しラジオ デドコロ』のパーソナリティに就任。ラジオ番組なのにブースに段ボールパネルを持ち込むなど“準備芸人”としても有名なもう中は、数え切れない程の弾数を用意して収録に臨んでいた。以下が、『デドコロ』初回のオープニングトークだ。
「梅雨の季語って皆さんは何を想像する? 僕は18禁の暖簾だと思うの。くぐるとき、6~7月は湿り気を帯びるからいつもより重たいのよ。今、皆さんは累計でどう? 『ドカベン』で言ったら何編? 僕、ブラビ好きじゃん。夏になるとビビアン・スーさんの歌声聴きたくなっちゃうの。歯の隙間から聴こえるような歌声じゃない? 炒飯よく作る、そんなもう中学生でございますが」
たった数分のオープニングトークなのに、話題が多すぎる。普通は1個の話題で引っ張るものだが、わずか数分に10個以上の話題を入れ込んだ。そうかと思えば、曲ではなく家で録音してきた“GAMEBOYやるときの音”を紹介。「ガチャッ、シャー」という懐かしの人工音を聴かせた後、「ノスタルジックになってほしい。小田和正の反り(『ラブ・ストーリーは突然に』のジャケのこと)を思い出してほしい」と不可解な意図を説明。最後は、ラジオブースに持ち込んだ木琴を弾きながらエンディングを迎えるというてんこ盛りの内容だった。
5月8日放送『マツコ会議』(日本テレビ系)で明かしていたが、もう中の自宅には約500冊のネタ帳があるという。ならば、この程度の手数は彼にとって朝飯前だろう。
「ギャオス内藤のVHS」と「渡辺徹のステッカー」を持参
他の出演者に気兼ねしない不可侵な独壇場と言えば、単独のロケ仕事もそれに当てはまる。
4月20日放送『相席食堂』(ABCテレビ)に出演したもう中は、大量の段ボールを積んだハイエースを自ら運転して登場。しかも、サングラスに革ジャン(この番組のためにBOOKOFFで300円で購入)という反社のようないでたちでやって来た。さらに、アウターを脱ぐとSHAZNAの98年武道館公演記念Tシャツを着ているというファッションセンス。やはり、手数の底が知れない。
その後、いちご園に向かったもう中は、頑なにSHAZNAのビニールバッグを持ったままいちご 狩りに励み、いちご園の農家の方に「プレゼントです」と手渡したのはギャオス内藤のプロモーションビデオだった。さらに、付近の神社を訪れたもう中が「大切なものを入れてお祓いすると願いが叶う」という釜に投入したのは、渡辺徹のステッカーである。
小物ネタをぶっ込めるだけぶっ込もうとするもう中。他の芸人だったら「オイオイ、やり過ぎだろ」と咎めたくなるが、この人なら仕方がない。
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