トランプを支える宗教右派のマーケティング! ドラッカー的ビジネスで信者獲得……ワクチンを信じない福音派の布教
#トランプ #キリスト教 #プロテスタント
メガチャーチ興隆の裏にあの“経営の神様”がいた!
こうした一連の施策は、実は福音派ネットワークの中で共有されたマーケティングのノウハウに基づいている。松本氏によれば、福音派系の大学の中には牧師を養成するコースでマーケティングも学ぶことができ、メガチャーチに関するマーケティングでMBA(経営学修士)を取得できる大学院もあるという。
「牧師が自らそうしたことを学んでいるだけでなく、メガチャーチはマーケティング・リサーチ会社に平均約21万ドル(約2300万円)を払い、教会経営の立て直しやプロモーション、エンタメ企画のプランニング、教会立地の策定などを依頼しています。教会とそうしたマーケティング・リサーチ/コンサル会社をつなぐ組織としては、84年に設立され、今では20万人の牧師や宗教リーダーが登録して情報交換する『リーダーシップ・ネットワーク』や、98年に設立されたリーダー養成機関『ハーフタイム・インスティテュート』などがあります」(同)
両者は共に、テキサス州でケーブルテレビ会社を経営していた企業家ボブ・ビュフォードが設立した組織。ビュフォードは、かつては「伝統的な牧師・教会のあり方から逸脱している」と批判されたメガチャーチの牧師たちを支援し、彼らの影響力を拡大するために後半生を捧げている人物である。ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長をはじめ日本の有名経営者たちも心酔する、経営学者ピーター・ドラッカーの薫陶を受け、『ドラッカーと私』(NTT出版)という著書もある。この本によれば福音派においては、成功したビジネスパーソンがメガチャーチの牧師に転じてリーダーシップとマネジメント能力を活用したケースや、そうでなくとも過剰なまでに行動的な牧師が珍しくないという。ドラッカー自身は福音派ではなかったが、「アメリカはキリスト教国として存続し得ないならば、長くは続かないだろう」という考えを持ち、リーダーシップ・ネットワークに喜んで協力してセミナーなどを行った。また、(やはり福音派ではないが)救世軍を「アメリカでもっとも傑出した組織である」と評価し、無償でコンサルティングに携わってもいた。
つまり、一方では進化論を信じず、ワクチン懐疑派が少なくないなど科学・医療に対して反近代的な態度を取る福音派は、もう一方ではほかの宗派の追随を許さないほどビジネススキルを駆使し、データを重視して積極的に顧客=信者獲得(ここはドラッカーに倣って「顧客の創造」と呼ぶべきか)に励んでいるのだ。頭の中でどう整合性が取れているのか、筆者には理解しかねるが……。
「彼らの中では、数字やデータとモラルとは別の次元の話です。キリスト教がかかわる部分はモラルの問題であって、世俗の科学が立ち入る余地はないのです」(前出・前嶋氏)
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