神のおかげで特殊能力を得た!『ザ・ボーイズ』が描く福音派のパロディ
#映画 #キリスト教 #プロテスタント
――スーパーヒーローの醜悪な裏側が暴かれていくAmazonプライム・ビデオのドラマ『ザ・ボーイズ』。ここで映し出される福音派の戯画とは――。(月刊サイゾー2021年4・5月号「新タブー大全’21」より転載)
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福音派メガチャーチは「こういう感じか」とわかるのが、Amazonプライム・ビデオのオリジナルドラマ『ザ・ボーイズ』のシーズン1だ。企業ヴォートがスーパーヒーロー事業を展開。所属ヒーローはカネを得て喝采を浴びるため、きれいな面を世間に見せているだけ。裏では、一般市民を事故死させた事実を隠蔽したり、ハイジャックされた飛行機の乗客を見殺しにしたりする。
そんなヒーローたちの頂点に君臨する7人=「セブン」に新しく加入するスターライトは敬虔なクリスチャンであり、彼女や、ほかの一員であるエゼキエル、トップのホームランダーがスピーチする場所がメガチャーチの集会だ。筋肉ムキムキのエゼキエルは、大観衆が集まったステージの上で特殊能力を使って腕を舞台いっぱいに伸ばし、「神のおかげでこの力を得た」と語る。
恋人を殺されて反ヒーロー組織「ボーイズ」に加わった主人公ヒューイは、そのエゼキエルに彼が男を買っている事実を突きつける。これが脅しになるのは、福音派で同性愛は禁忌だからだ。
「福音派が強い米南部では、男性の同性愛者はカミングアウトしづらいため、黙っているだけでなく過剰に男らしく振る舞う部分があります。実際、南部の福音派を支持基盤とする共和党の某タカ派重鎮議員はおそらくゲイだと一部の国民が察していますが、表向きは痛々しいほどマッチョです」(前嶋氏)
福音派式の浸礼(人の全身を水槽に沈めた後、起き上がらせて洗礼する)の儀式を執り行うホームランダーは、「アメリカは神に祝福された国だ」と人々に訴えかけ、「世界」ではなく「アメリカ」を救うために戦い、セブンへ人種やハンディキャップなど多様性を導入することを断固拒否。これは無論、トランプに熱狂した白人至上主義である一部の福音派の戯画だろう。
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