切磋琢磨しない芸人像はリアルなのか? お笑いファンが『コントが始まる』に感じる不満と『オッドタクシー』の解像度の高さ
#お笑い #コントが始まる #俺の話は長い #オッドタクシー
アニメキャラクターが「傷つけない笑い」を議論する
タカ 全体の面白さが芸人のくだりのクオリティにも反映されていると思います。6話では「傷つけない笑い」にまで言及してました。「1人傷つけても10人笑えばいい」という柴垣(ユースケ)に対して、ひとりで売れかけてる相方の馬場(津田篤宏)が「そんな時代ちゃうと思うけどなぁ」と返すところとか、すごかった。
ユージ 制作側が、お笑いにまつわる議論を芯で捉えていることがわかります。ちゃんと現代社会の中のお笑い・芸人を描こうとしている。『おそ松さん』みたいにお笑い畑の人が書いてるのかと思ったら、マンガ『セトウツミ』の作者が脚本担当なんですね(此元和津也氏/脚本作に映画『ブラック校則』ほか)。
タカ マンガ家さんなのか。観察眼がしっかりしているからお笑い界のことも細かく見て取れるんでしょうね。
ユージ ちなみに、映画版『セトウツミ』は奇しくも菅田将暉が主演です(笑)。
タカ 2話の冒頭でも「笑いって知性と教養がないとわからへんやん」という柴垣と、「でも消費者のニーズに答えるのも我々の…」と食らいつく馬場で、それぞれの見てる方向が明確にされていた。ホモサピエンスのネタ担当は柴垣だけど、コンビのブレーンじゃないほうが明るくてマスのほうを向いているって、現実でもそうじゃないですか。『コントが始まる』はそうしたキャラの書き分けも薄い。
ユージ 一応、ブレーン兼ツッコミが春斗(菅田将暉)、瞬太(神木隆之介)が不思議ちゃん系の大ボケ、潤平(仲野太賀)がスベリ芸系の中ボケだとは思いますが。東京03やハナコのようで、今のトリオの王道ではあります。
タカ それはわかるんですけどね。3人がいい役者なだけに、もっと深みがある役できるだろうと思ってしまう。
ユージ ただ、なんとなくのキャラ分けはあるけど、それぞれがどういう笑いをやりたいのかは一切見えてきません。それこそが芸人なら一生付き合わないといけない命題じゃないのか? ホモサピエンスにはそれが見えますよね。
タカ だからマクベスは解散するし、ホモサピエンスはきっといずれどんな形であれ売れるだろうなと思える。あらためて、『コントが始まる』は芸人の話ではあるけど、その特有さにはこだわりがないんでしょう。多分、浅い時間帯の放送で視聴者層が幅広いから、観る人が我が身に置き換えやすいようにつくってるんだと思います。それゆえに彼らの環境は閉じているし、結果としてコントのテーマも閉じている。『俺の話は長い』では閉じていることが有効に働いていたんですが……。
ユージ モチーフとの食い合わせが悪かったんでしょうね。個人的に『コントが始まる』で一番面白かったのは、瞬太の『ぷよぷよ』のプレイ画面が真空ジェシカ・川北(茂澄)による吹き替えだってところでしたよ。
タカ それはあまりにもお笑いファン的すぎる(笑)。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事