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日刊サイゾー トップ  > 切磋琢磨しない芸人像はリアルなのか?
タカ&ユージのあぶないお笑い批評

切磋琢磨しない芸人像はリアルなのか? お笑いファンが『コントが始まる』に感じる不満と『オッドタクシー』の解像度の高さ

芸人である時間は「モラトリアム」なのか

切磋琢磨しない芸人像はリアルなのか? お笑いファンが『コントが始まる』に感じる不満と『オッドタクシー』の解像度の高さの画像2
『俺の話は長い』日本テレビHPより

タカ 序盤は「解散してほしくないな」と思って観ていても、3~4話くらいから「続けるのは無理だな」って思えてくるんですよ。ドラマのテーマ自体が「モラトリアムを終わらせる」というところだろうから、そう観られることは制作側の狙いなんでしょうが。

ユージ だからこそ『火花』のような「身を削って芸人やってる」という描き方にはしなかったんですかね。芸人を描くならそうであれ、とはまったく思いませんが、あえてこうした描き方にする理由はなんなんでしょうか。

タカ 中途半端に流されてきた人に「流されていいよ」ということだと思うんです。芸人をやってるのも出会いや偶然によって導かれた流れの中のひとつであって、だからこそ固執しなくていい。優しく受け止めるとしたらそういうことで、それは同じく金子茂樹さんが脚本を書いた『俺の話は長い』(日テレ)からつながっているテーマだと思います。主人公は失業したニートで、あれも一種のモラトリアムの話でした。回り道をしてもいいんだ、と。結果として『俺の話は長い』は良作になっていた。ただ回り道として切磋琢磨してない芸人を見せられると、お笑いファンとしてはちょっと……。

ユージ 劇中で真壁先生が言う「18歳からの10年と、ここからの10年はしんどさが違う」というのは実際に芸人も直面する問題でしょうけど、そのわりに10年しんどかった描写はあんまりないですし。中村倫也演じるマネージャーの苦労として語られる程度です。

タカ 一方で、結成の経緯だったりトリオで仲が良かったりは、今の潮流を意識してると思う。「クラスの人気者=おもんない、ではない(はず)」「今はコンビやトリオで仲が悪いわけではない(はず)」みたいな、近年のお笑い業界のあるあるは取り入れてますよね。でもそのあたりが言われるようになったのってちょっと前じゃないですか。“ちょっと前”のことほど現実のお笑いファンにとって古臭く見えるところ、ないですか?

ユージ 「やってんなぁ」って感じはします。大事なのはそこじゃないんだけどな、と。

タカ それに比べて、アニメ『オッドタクシー』(テレ東ほか)で描かれる芸人の悩みや議論はもっと踏み込んでると思いました。ちゃんと現在の売れそうで売れない芸人の実感らしさがあった。

ユージ ダイアンが声優を務めるお笑いコンビ「ホモサピエンス」をめぐるパートですね。現状に不満な関西芸人の声をユースケにやらせるあたり、絶妙すぎる。お笑い以外の部分やストーリー自体も面白いです。

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