切磋琢磨しない芸人像はリアルなのか? お笑いファンが『コントが始まる』に感じる不満と『オッドタクシー』の解像度の高さ
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お笑いブームがいよいよ極まってきている。ただただ楽しく観るのもいいが、ふとした瞬間に現代社会を映す鏡となるのもお笑いの面白いところ。だったらちょっと真面目にお笑いを語ってみてもいいのではないか──というわけで、お笑いウォッチャー・タカ&ユージが気になる動きを勝手に読み解く!
苦しみも切磋琢磨もない芸人ライフを描く意味
タカ いつもこの連載ではバラエティやネタ番組を取り上げていますが、今回はちょっと趣向を変えて、お笑いを描いたフィクションの話がしたくて。ドラマ『コントが始まる』(日テレ系)がお笑いファンとしてモヤッとするところが結構あるんです。毎回「コント◯◯」と一本のコントから始まって最後はそのオチで締める形式ですが、まずあのコントが面白くなくないですか?
ユージ 面白くはないですが、売れない芸人がやっている体(てい)なので、特に面白くある必要はないのかなと思って観てました。2012年の「キングオブコント」決勝に出た「夜ふかしの会」主宰の岡田幸生さんがコントを監修しているようですね。
タカ 設定上仕方ないことだとは思うんですが、それにしても面白くないなと。そこを除いても、芸人の在り方みたいな部分の描き方が古いと思うんです。「先輩コンビが楽屋で険悪」みたいなあるあるも手垢がついてると思う。
ユージ 僕はそもそも「このドラマは芸人の話である必要がないのでは?」と疑問を抱いてます。芸人でなくミュージシャンでも代替可能じゃないですか?
タカ ミュージシャンでもいいところを芸人にするのが“今”だとは思います。そっちのほうが視聴者にとって身近なのかもしれません。
ユージ そうなんですけど、逆にそれしか芸人が題材である理由がないと感じました。自分のお笑い観が狭いのかもしれませんが、芸人って周囲の芸人同士の人間関係や置かれてる環境によって形成されていく部分が大きいと思うんです。でもマクベスにはそれが一切ないじゃないですか。先輩も後輩も同期も賞レースもなくて、ネタ合わせと単独ライブだけがある。なんでこんなに閉じた世界でお笑いのことを描くのか、その狙いがつかめていません。
タカ 事務所は音楽系だし、合同ライブとかたまにある営業のときしかほかの芸人の存在は描かれないし、隣のマンションの人とばっかりつるんでる場合か? と思います。お笑いは人を笑わせるために切磋琢磨するものなんだというところが全然考えられていない。だからコントがつまらない……。又吉(直樹)の『火花』にしても、演劇の世界ではあるけれど『劇場』にしても、他人の才能を羨んで苦しんだりする様子が描かれてましたが、そういうものはまったくないですね。
ユージ 「楽屋で先輩コンビの仲が悪い」ってあるあるも、もっと精度の高いあるあるが散りばめられてる中に混じっていたらそこまで気にならなかったはずです。
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