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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 前田日明と「リングス」の曳航(1)
リングス旗揚げ30周年記念 短期集中連載『天涯の標』

【格闘王・前田日明と「リングス」の曳航 Vol.1】UWF解散、引退説、そして新団体へ

前田に手を差し伸べた人物たち

【格闘王・前田日明とリングスの曳航 Vol.1】UWF解散、引退説、そして新団体への画像4
まさにライバルであり盟友だったクリス・ドールマン(画像は、1992年の有明コロシアムでの一戦から)

 〈ドールマンは俺のことを心配して、何回も連絡をくれたんです。UWFが解散して、「前田は引退するらしい」っていう噂を聞いたらしくて。

 去就については何も言ってなかったんですけど。周りの憶測でそういう話になっちゃっていた。

 あいつにはすでに契約金を渡してたんです。だいたい1000万円ぐらいのお金でした。申し訳ないから、

「俺のミステークでこうなってしまった。君らの失敗や責任ではない話だから。そのお金はもう全部あげる。気にしないでくれ」

 って言いました。そしたら、あいつはこう言ったんです。

「お前ができるところまで、二人で頑張ってやろうじゃないか」〉

 ドールマンからの申し出は意外なものだった。

「俺も道場に集まってくる若い者の面倒を見ている。やんちゃな連中が多いけど、みんな真面目で純粋な奴らだ。こいつらをそのまま放っておいてたら、犯罪に走ったり、妙な事件に巻き込まれたりするに違いない。見てられないような奴ばかりだ。こいつらのためにも何かしたい。格闘技を一生懸命やったら、それで飯が食える。そんな道を俺が見つけてやりたい。せっかくお前と出会って、その道が拓けてきたと思った矢先にUWFが解散した。引退なんて考えないでくれ。できるところまでやろうじゃないか」

〈「ああ、そうなんか」と思った。申し訳ないなと。〉

 前田はユニバーサル時代を思い返していた。旗揚げシリーズが終わったあと、新団体は早くも行き詰まりを見せる。猪木が来ないのは明らかだ。髙田を通じて新日側から前田に指令があった。

「お前だけは帰ってこい」

 前田は断った。ユニバーサルに集まった選手やフロントの社員。彼らに対する責任はどう取るのか。将来のメインイベンターとして古巣に約束された厚遇など、どうでもよかった。

 新生UWFで遮二無二突き進んできた自分の背中を遠いオランダの地で見つめている男がいた。ここにもすでに責任が生じている。知らん顔などできなかった。

 ドールマンの道場に集っていた清廉で凶暴な仲間たち。ディック・フライやヘルマン・レンティング、ハンス・ナイマン、ウィリー・ピータースら「リングス・オランダ」の面々は前田の決起によりプロのファイターへと転身する。

 同じころ、前田に手を差し伸べた人物がもう一人いた。小川賢太郎。すき家をはじめとする外食チェーンを束ねるゼンショー代表取締役会長兼社長兼CEOである。

 〈小川さんはすごく応援してくれたんです。俺が一人で朝から晩まで引きこもって考え事をしているときに心配してくれた。

「明日のことなんか、そんなに考えてもしょうがないじゃないか。あなたは若いときから武道をやりながら生活してきたんでしょう。だったら、体を動かしながら考えたらどうだ」

 そう言って、道場を無償で用意してくれました。バーベルやダンベルなんかの器具も全部そろえてくれて。リングスはそこから全てが始まったんです。

「できるところまでやってみる。それで万歳したら万歳したでしょうがない。そこまでやれば、みんな納得してくれるだろう」

 そう思えました。「じゃあ、やろうか」って。ようやく気持ちが切り替わったんです。〉

(Vol.2に続く)

 

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片田直久(ジャーナリスト)

1968年宮崎県日向市生まれ。出版社、編集プロダクション勤務を経て、現在はインディペンデントとして政治や医療、経済、抵抗文化などの分野で企画・取材・執筆・編集に携わる。渡世上の師は作家・大下英治。2020年よりYouTube「前田日明チャンネル」で合いの手を担当。現在、「リングス」について鋭意取材敢行中。日本ジャーナリスト協会運営委員。著書に『タモリ伝』(コア新書)。

かただなおひさ

最終更新:2021/06/19 21:48
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