能條愛未、つかこうへい作品に挑む! キャリアを深掘りして見えてきた「俳優」としての出発点とこれから【ロング・インタビュー】
#インタビュー #演劇 #能條愛未 #新・熱海殺人事件
俳優・能條愛未のキャリアを振り返って
――能條さんの俳優としてのキャリアについてうかがいます。以前在籍されていた乃木坂46は、グループ結成初期の頃の『16人のプリンシパル』(2012~)をはじめ、舞台演劇に力を入れているグループですが、当時の活動の中で演技への意識が強くなっていったタイミングはありましたか?
能條 乃木坂46時代に出演していた舞台は、自分が好きでやっているという感覚が強かったです。もちろんお仕事なんですけど、どう評価されるか、周りから自分がどう映ってるかを気にせずに、舞台に立てるのが楽しくて幸せというシンプルな感情でした。グループを卒業して、舞台女優として本職になったタイミングで初めて恐怖心というか、私の芝居はお客さんにどう映っているんだろう、ここで結果を残せなかったら次に舞台のお仕事来るだろうか、と気になりだしてしまったんですよ。そこであらためて、この仕事の大変さや覚悟について考えさせられました。
――グループ在籍時の舞台出演でも、能條さんは『美少女戦士セーラームーン』(2018)のセーラージュピターや『少女革命ウテナ』(2018-)の天上ウテナなど、人気も歴史もあるキャラクターを背負っておられましたが、やはり怖さよりも楽しさの方が強かったですか?
能條 『ウテナ』にしても原作ファンの方がたくさん観に来てくださったので、ガッカリさせてはいけないという意味で緊張というか、しっかり原作を研究しなければとは考えていましたが、重荷を背負うという感覚はそこまでなくて、どちらかといえば楽しんでいましたね。
――その後、グループを卒業されてから、能條さんは幅広い作品に柔軟に参加されていますよね。たとえば『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』(2019)や『ポーの一族』(2021)といった大劇場のミュージカルにも出演されています。そうした作品には自然に役に入っていけましたか?
能條 いえ、やっぱりめちゃめちゃ緊張しましたね。大きな劇場でのミュージカルは、私が目指しているものなので、夢の場所に立っていることは本当にありがたいです。でも、あのキラキラした世界観の舞台が出来上がるためには、当たり前ですけど稽古もすごく大変ですし、周りの方々のレベルにも圧倒されました。私、大して実力もないのに、こんな舞台に立ちたいって気軽にいってしまっていたんだな、と。反省したというか、甘くないということを突きつけられました。
――それらのミュージカルでは、もともと宝塚歌劇団で中心的に活躍されていた方々と共演する機会も多いですよね。
能條 たとえば『ポーの一族』で共演させていただいた明日海りおさんは、普段は本当にフワフワしていて、仔羊ちゃんみたいにかわいいっていう感じなんですけど(笑)。でも本番が始まって舞台袖から拝見していると、普段の雰囲気から想像できないくらいに、ステージに立った瞬間の輝きやスター性、カリスマ性みたいなものがすごくて。本当に2次元を見ている感覚になるくらい圧倒的なオーラがあって、すごくかっこいいです。私も一応、同じ女優さんではあるので、少しでも人を圧倒させられるようなスター性やオーラを出せるようになれたらと思っています。
――そうした大劇場のミュージカルの一方、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの名作戯曲を新たに描き直すKERA CROSSシリーズの『グッドバイ』(2020)にも出演されました。KERA戯曲の世界に入っていくのはどんな経験でしたか?
能條 演出の生瀬勝久さんからは本当にたくさんのダメ出しをいただいて、いろんなことを教えていただきました。たぶん、出演者の中で私が一番ダメ出しの数が多かったんじゃないかな。ただ本番に入って、秋元康先生が観に来てくださったときに『コメディのセンスはもともとあるんだから自信を持って』と声をかけてくださって、すごくうれしかったんです。生瀬さんからも、私にはもともとテンポや間のとり方が自然と備わっているはずだから大丈夫と言っていただいて。そういうコメディへの感覚については、周りから言われて初めて気づかされたんです。だから、この先コメディの舞台に出演する機会があれば、頑張りたいなと思いますね。
――周囲から言われるまで、ご自身ではコメディ適性についての自覚はなかったんですね。
能條 なかったですね。コメディはもちろん好きなんですけど。乃木坂46にいた当時、グループ内でなぜか「バラエティ担当」みたいな立ち位置だったんですよ。私自身はそれがまったく理解できなくて。別に面白いことも言えないし、おしゃべりも得意じゃないのにと思っていたんですけど、たぶんそういうことなんだろうなと。お芝居でコメディのセンスがあると言っていただいたのと同じように、バラエティ番組でも周りから見たら面白いことを言っていたり、変わったリアクションをとったりしていたのかな。その自覚がなかっただけで、周りの方は気づいてくださっていたんだなと思いましたね。
――周りから気づかされる中で、他にもご自身の得意分野が見えてくることはありますか?
能條 ウェットな役を任されることが多いんです。過去につらい経験があったり、コンプレックスがあって周りの目を気にしてしまったりという役どころが、なぜか続いたりするんですよね。私自身のイメージは、どちらかといえばサバサバしてたりおもしろ系に見られているのかなと思っていたんですけど、不思議と悲しさのある役を演じることが多くて。それもまた自分で気づいていなかっただけで、もしかしたら陰のあるお芝居が得意ということなのかもしれません。
――それらウェットな役に対して、自然にご自分を投影できたりしますか?
能條 私自身、自信がなくてコンプレックスがあってマイナス思考で、という部分があるので、自然と理解できるのかなと思います。『ポーの一族』で演じたジェインという役でいえば、裕福な家庭で父親の陰に隠れて地味に育ってしまって、自信もなくてコンプレックスばかりという人物でした。そして裕福ゆえにお金持ちのパートナーと結婚させられて、周りからはひがまれてしまうという役どころ。周りの目を気にしたり自信がなかったりというのは、私自身の根っこの部分で備わっているので、そんなジェインのことも、すぐに理解できました。
――その適性もやはり、そうした役柄を求められる中でわかってくることでしょうか?
能條 そうです、わかってくる。だからやっぱり、自分がやりたいことと、本当に自分が向いてることもまた違うんだなと思いますね。
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