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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.638

拉致日本人含む12万人がいる北朝鮮収容所の内情 3Dアニメで描いた地獄絵巻『トゥルーノース』

収容所内には、日本人村が実在する!

拉致日本人含む12万人がいる北朝鮮収容所の内情 3Dアニメで描いた地獄絵巻『トゥルーノース』の画像3
帰還事業で北朝鮮に渡った日本人家族の2~3割は収容所送りとなった。

 ある日、ヨハンとミヒは日本から拉致されてきた女性の最期を看取る。体の衰弱しきった日本人女性に与える薬も食べ物もなかったが、ミヒは母親の形見である楽器ヘグムを演奏し、日本の童謡「赤とんぼ」を歌う。強制収容所には、日本からの拉致被害者や、日本からの帰還事業で北朝鮮に渡った在日帰国者たちの2~3割が収容されているという。在日帰国者は収容所送りとなり、全財産を没収されることが少なくなかった。収容所内にある日本人村に流れる「赤とんぼ」。その歌声を耳にした日本人は、故郷の美しさを心に思い浮かべて涙したに違いない。ミヒが歌う「赤とんぼ」はとても美しく、そして堪らなく哀しい。

 北朝鮮には12カ所の強制収容所があり、約12万人が収容所生活を送っていると言われている。ナチスドイツ時代のホロコーストを思わせるが、強制収容所よりもさらに恐ろしい場所が北朝鮮には存在する。「完全統制区域」と呼ばれ、ヨハンの父親などの政治犯はそこで日々拷問され続ける、地獄の中の地獄である。強制収容所で暮らす人たちは「完全統制区域」に送られることを恐れ、ソビボル絶滅収容所を題材にした『ヒトラーと戦った22日間』(18)のような暴動を起こすこともできない。金日成、金正日親子が編み出した恐怖政治は、ナチスドイツよりも巧妙である。

 北朝鮮の憲法にも「人権」は謳われているが、ヨハンたちは幼い頃から主体思想(チュチェ思想)を教えられており、人権という概念を知らずに育っている。金ファミリーによる独裁政権を支える主体思想の前では、憲法も人権という言葉もまるで意味がない。

 どうすれば、今も強制収容所や完全統制区域に隔離されている人たちを救い出すことができるのか。我々にできることは、まずは収容所の実態を知ること、そして多くの人にこの映画を観てもらうこと。そこから始めて、国際的世論を高めていくしかない。アニメ史上、最も衝撃的な3D作品『トゥルーノース』。この恐ろしい映画が公開されることで、世界に波紋がどれだけ広がるのか。北朝鮮側の反応も含めて、注目したい。

 

拉致日本人含む12万人がいる北朝鮮収容所の内情 3Dアニメで描いた地獄絵巻『トゥルーノース』の画像4『トゥルーノース』
監督・脚本・プロデューサー/清水ハン栄治 音楽/マシュー・ワイルダー
声の出演/ジョエル・サットン、マイケル・ササキ、ブランディン・ステニス、 エミリー・ヘレス 配給/東映ビデオ 6月4日(金)より日比谷TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
c)2020 sumimasen
https://true-north.jp

最終更新:2021/06/04 19:00
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