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「Omiai」の個人情報流出問題…スポーツ界でも進む「身長・体重はNG」「自己ベストも個人情報」への困惑

Omiai

 先日、婚活マッチングアプリ「Omiai」が外部からの不正アクセスを受け、171万1756件分もの個人情報が流出。会員の氏名、住所、生年月日、顔写真などが漏洩したとみられ大問題となった。言わずもがな、個人情報の扱いには細心の注意が必要だ。

 小中学校のクラス名簿は姿を消し、子供の運動会の写真撮影さえ許可が必要な時代だが、その波はスポーツ界にも押し寄せている。日本陸上競技連盟が2月に発表したアナウンスには衝撃が走った。

「連盟のHPに突然『アスリート個人情報(身長・体重)の取り扱いについて』というお願いが掲載されました。アスリートの身長や体重について、今後は非公開にすることを求める内容です。連盟によれば、主に女性アスリートの身長、体重、BMI(身長と体重から算出される、肥満度を表す指数)ばかりに注目が集まることを危惧したそうで、掲載する場合には、使途を明確にし、アスリートの同意を得ることを求めています」(スポーツ専門誌記者)

 5月にはJOC(日本オリンピック委員会)が、東京五輪の選手団名簿から身長と体重の情報を削除する方針であると発表。非公開の流れは一気に進んでいる。様々な競技の取材を30年以上続けてきたベテランのスポーツジャーナリストは、こういった傾向に「それが時代の流れなら仕方ないが……」と、一定の理解を示しつつ、その危うさを指摘する。

「特に女性であれば“体重を聞かれたくない”という思いはあるでしょう。女性に体重を聞くのは失礼な行為であるというのが共通認識ですから。けれども、アマチュアならともかく、観客ありきで成立している競技において、身長や体重といったデータを提供することは、興味を喚起する点で大切な作業です。

 同じ100m走でも、160cmの選手と195cmの選手が走るのは意味が違いますし、ギリギリまで体重を絞ったマラソン選手のデータは努力の結晶です。教えたくないと言うなら、それを尊重すべきですが、それが競技の魅力を減ずることを認識する必要があります。身も蓋もないことを言いますが、どうしてもイヤなら、少しぐらいサバを読んだって良いんですよ。そんな選手はいくらでもいるんですから」(スポーツジャーナリスト)

 努力の結果として名声や多くの富を得たいのなら、ファンのニーズに応じるべきだという意見には説得力がある。ただ、そんな意見はもはや“前時代の妄言”なのかもしれない。状況はさらに先鋭化している。

「数年前、学生スポーツの取材をしていて、記録会で出た自己ベストをもとに分析記事を書いたところ、クレームを付けられたことがありました。“本番でマークされるから、自己ベストを書かないで欲しかった”というのです。その記録会は一般客も入れるもので、結果もアナウンスされたのに、“記録を勝手に書かれた”と、抗議を受けたのです。こうなるといよいよ『記録』も個人情報です。

 TBSのバラエティ番組『炎の体育会TV』には、マスクをしたアスリートが子供たちと対決する人気コーナーがありますが、究極的には、あれが未来のアスリートの姿かもしれません。身長・体重のみならず、顔や名前も伏せられ、純粋にタイムや勝負の結果を競うのなら、プライバシーは守られます。極端に聞こえるかもしれませんが、身長もダメ、体重もダメ、自己ベストもダメなら、そのうち『名前もダメ』『顔は写すな』となるかもしれません」(同上)

 マスクをしたアスリートが、リモートで戦うようになる日は、意外とすぐなのかもしれない?

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2021/06/08 20:00
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