「徒歩ニキ」はなぜ歩くのか? 東京から三重、神戸、青森…約2850kmを徒歩旅で踏破した2ちゃんねる住民【インタビュー】
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「おーぷん2ちゃんねる なんでも実況J板(通称「おんJ」)」に現れる「徒歩ニキ」を知っているだろうか。徒歩ニキは“超”長距離を徒歩で旅する様子を実況するスレッドを神出鬼没に立ち上げ、そのストイックな足取りにより、2ちゃんねるの住民たちから注目されている存在だ。彼が歩いてきた徒歩旅の全容は、以下の通り。
行程 | 距離 | 日程 | |
1 | 東京駅から神奈川・江ノ島 | 約54km | 2017年11月15日~16日 |
2 | 東京駅から静岡・淡島 | 約124km | 2018年6月30日~7月2日 |
3 | 東京駅から宮城・仙台うみの杜水族館 | 約222km | 2018年9月21日~26日 ※途中断念 |
4 | 東京駅から茨城・かすみがうら水族館と大洗水族館 | 約120km | 2019年1月16日~18日 |
5 | 東京駅から三重・鳥羽水族館と伊勢神宮 | 約475km | 2019年4月7日~19日 |
6 | 東京駅から仙台・松島と平泉、山形・加茂水族館 | 約607km | 2019年9月1日~16日 |
7 | 東京駅から神戸・須磨水族館 | 約546km | 2020年2月17日~3月2日 |
8 | 東京駅から青森・浅虫水族館 | 約696km | 2020年10月11日~29日 |
東京駅を出発地として、現時点で東は青森浅虫水族館(全行程距離約696km)、西は神戸須磨水族園(同約546km)までを踏破している彼からは、“歩く”という行為そのものへの愛情が率直に伝わってくる。1日に30~70km以上歩き、トータルで約2850kmを踏破した彼を直撃してみたら、徒歩ニキの“徒歩哲学”が見えてきた。
2ちゃんねるで実況しながら歩いてみようとしたきっかけ
――この度は、突然なインタビューの依頼に応じてくださりありがとうございます。こうしてメディアの場でお話しされるのは、今回が初めてですか?
徒歩ニキ:そうなんです。インタビューのお声がけをいただいて、ビックリでした。
――まず、徒歩ニキさんのこれまでについて振り返っていきたいのですが、2ちゃんねるでご自身の徒歩旅を実況するスレッドを初めて立てられたのは、2017年11月の「【実況】東京から江の島まで走破」でしょうか?
徒歩ニキ:そうですね。もともと歩くのは趣味だったので、山手線を徒歩で一周(約40km)するといった経験はあったのですが、書き込みで実況しながら歩いてみるっていうのは、約3年前に江の島へ行った時が初めての経験でした。
――2ちゃんねるで実況しながら歩いてみようと思われたのはなぜだったんでしょうか。
徒歩ニキ:その頃ちょうど自分が2ちゃんねるに書き込みをし始めた時期だったので、せっかくだから歩きながら実況してみて、どのくらい反応があるのか見てみたくなったのがきっかけだったと思います。
――なるほど。それにしても、思い付きで東京駅から江の島まで徒歩で行ってしまうという行動力はすごいです。
徒歩ニキ:ありがとうございます。でもやってるうちに、書き込んでくれる人たちと会話しながら歩いているような気分になってきて、その感覚はそれまで一人で歩いているときにはなかったものだったので、とても楽しみながら歩けました。
ありがたいことに、皆さんあたたかく見守ってくれて。徒歩旅の先々で、スネーク(潜入行動をする人をさすネットスラング)をしてカロリー補給用のウィダーゼリーや足のマメの応急処置グッズを届けてくれる人もいます。
最初は『2ちゃんねるの向こう側の人たちの暇つぶしにでもなれば良いな』くらいの気持ちだったんですけれど、やってるうちに、徒歩で旅するということに興味がある人って自分が想像していたよりも多いのかもしれないと気づいて、『あ、歩くということが好きな人って自分だけじゃないんだ』と感じることができました。
――初めての徒歩旅でそういった感触を得られていたのですね。そして第2回目、2018年7月にチャレンジした「東京から静岡・淡島まで歩く」では、前回の東京→江の島間よりも距離を2倍以上に延ばし、箱根越えも達成されました。
徒歩ニキ:はい。江の島の時は日帰りですし、『これは行けるだろう』という気持ちが強かったのですが、静岡までとなると都や県を越えて日をまたいだ移動になるわけなので、さすがに先の見えない不安が大きかったです。でも、その不安が逆にワクワクへとつながっていったんですよね。
――確かに、歩いて行く道程が想像できないほどの長距離ですよね。そして、イメージがつかないからこそのワクワクがあったと。
徒歩ニキ:そうですね。やっぱり全く知らない土地なのですごく気を付けながら歩いてはいましたが、それでも知らない場所に行くことに対する期待が不安を上回っていた感じでした。あとは、移動距離も長いぶん景色も地域の空気感もどんどん変わっていきますし、そういった全身で感じる変化が1日ごとに更新されていく楽しさも、その時に知りましたね。
――その後、第4回目の2018年に敢行された「【実況】東京から仙台の水族館まで徒歩で行く」にて、初めてにして今のところ唯一となる途中断念といった挫折も経験されています。
徒歩ニキ:「そうなんです。スケジュール的に、このままのペースでは帰りの予定日までにどうしても仙台へたどり着けないと、福島の郡山駅で徒歩を断念してしまって。
――とはいえ東京駅から郡山駅までも約222kmあるわけなので、相当な距離ですよね……。
徒歩ニキ:そうかもしれません(笑)。でもその時に挫折を経験したおかげで、その後の徒歩旅にも変化があったようにも思います。個人的に長距離を歩くうえで、暑さや寒さだったり空腹感や睡魔よりも、雨に降られることが一番気力を奪われて苦しいんですよ。雨は本当につらいですね。なので、こまめに天気予報をチェックして予定を組んだり、あとは装備も雨対策を中心に万全にするようになりました。レインコートや靴カバー、足の裏にがっつりテーピングを巻いてマメを作らないようにしたり。あと、多少の困難があったりしても『仙台のときに比べたらマシだな』と思えるようになったりもしたので、精神的な影響も大きかったと思いますね。
――挫折を経験している徒歩ニキさんだからこそ、2ちゃんねるのみなさんも応援したくなるのかも知れません。その後、2019年9月の「東京駅から松島と平泉、山形加茂水族館まで歩く」や、2020年10月の「東京駅から青森浅虫水族館まで歩く」といった東北方面の徒歩旅は、途中断念された仙台旅への対するリベンジの気持ちもあったのでしょうか。
徒歩ニキ:はい。ついに仙台までたどり着いた時はやっぱり「ああ……来たな!」とこみ上げるものがありましたね。その間、ちょうど大きな台風(※「令和元年房総半島台風)」が日本に上陸していて、それに追いかけられながら大変な思いをしていたので余計に。それまで自力で行けなかったところに、ようやく自分の足で来れたという喜びは大きかったです。
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