新垣結衣、星野源の「職場結婚」を読み解くと? フィクションの『逃げ恥』がリアルな夫婦になる瞬間
#結婚 #新垣結衣 #星野源 #逃げるは恥だが役に立つ
私たちがみくりと平匡の「逃げ恥婚」に熱狂する理由
——私たちも職業を演じている。だとすれば、「職場恋愛」こそ、身近でフィクションがリアルになる瞬間でもあることでしょうか。
西口:生まれながらにしてどんな仕事をして誰と付き合うかがあらかじめ決められていない近代以降の私たちは、望むと望まざるとにかかわらず、自らが選んだ「仕事」を通して世界や社会とつながり、折り合っていくことになります。その視点を分かち合いやすいことが職場恋愛の強みではないでしょうか。日常レベルでは業界内の愚痴や世間話が通じるし、もっと深いレベルでいえば、世界観や社会観も共有できる可能性が高まります。
俳優であれば不規則な労働時間や特殊な契約などの問題も共有できるし、それを通して「対話」ができる。職場恋愛が雇用される人だけでなく俳優などの自営業者の間でもよく見られることは、ある意味で合理的で当然ともいえます。
——対等な「対話」は、ドラマ『逃げ恥』でも重要な要素だったと思います。
西口:『逃げ恥』があれだけ多くの視聴者の支持を得たのは、現代の「当たり前」とされている夫婦のあり方、とりわけ性別役割分業について問題提起をするドラマだったからですよね。みくりと平匡が「雇用(偽装結婚)→恋愛→結婚」と至る過程で、交渉を含む「対話」の成功と失敗を辛抱強く繰り返して、互いに納得してパートナーとして歩み出す、その2人の関係性が魅力的に映ったのではないでしょうか。
そうした対等な対話は、「公」の場においても「私」の場においても、本当なら私たちもやりたいことのはず。ですが、性別役割分業意識や雇用不安などのパワーバランスから難しい面もある。だからこそ、そうした対話が、現実で結ばれた新垣さんと星野さんの間でも実現されるのではないか、そうあってほしいという視聴者の願望が、お2人の結婚報告のニュースに対しても投影されていたと感じます。
西口想(にしぐち・そう)
1984年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、テレビ番組制作会社勤務を経て、現在は文筆家・労働団体職員。著書に『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事