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【短期集中連載】音楽ライターが検証する『大豆田とわ子と三人の元夫』のED評

「大豆田」ED曲、BIM再登場で判明した「Veranda」とドラマの関係性ー物語が進むごとに歌詞の意味が判明

「大豆田」ED曲、BIM再登場で判明した「Veranda」とドラマの関係性ー物語が進むごとに歌詞の意味が判明の画像1
フジテレビ『大豆田とわ子と三人の元夫』公式サイトより

「ドラマ満足度ランキング」(オリコン)において2週にわたり首位を獲得した『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)。回を追うごとに予想し難い苦難が起きては過ぎていき、もはや“ラブ・コメディ”というジャンルで形容できない様相を呈してきた。

 そんなサプライズに富んだ今作の中でも、毎回変わるエンディング曲「Presence」に注目する短期連載。今回もラップだけを抜き出して語ることが不可能なほど、リリック(歌詞)にドラマの内容が練りこまれている。

※以下、最新回である7話までの内容への言及を含みます。

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 第6話のED曲は、1話目に使用された「Presence I(feat. KID FRESINO)」のセカンドヴァースが使われ、BIM/NENE/Daichi Yamamoto/T-Pablowと続いたED曲におけるサプライズは、いったん折り返しを暗示させていた。

 実際に第7話では「Presence II(feat. BIM, 岡田将生)」の後半が使われ、放送後には同曲の配信がスタート。Presence I~Vまでを収録したアルバム『Presence』の発売も明らかとなったタイミングで公開されたBIM本人によるコメントを参照すると、慎森(岡田将生)に彼自身強く共感できるところがあったようだ。それでは、リリックを読み解きたい。

 まず「僕はまるで逃げられるストロー」のストロー。

 これは、6話でとわ子の親友・かごめの危篤を知った八作(松田龍平)が病院へ向かう途中、急いで購入するアイテムだ。理由は、とわ子がかごめのパーカーの紐を通すために買うよう八作に頼んでいたからである。つまり、八作は想いを密かに寄せていたかごめの最期に駆けつけるときでさえ、とわ子との約束を守ることで、かごめよりとわ子を大切に思っていたことを暗に伝えるべく手にしたと思われる。

 この6話を踏まえると、八作を邪魔する「逃げられるストロー」は慎森らしい。また、かごめの死を思い起こさせるストローを「逃げられる」とコミカルに擬人化することで、驚くほどライトに描かれたかごめの死を理解しているBIMの視点もおぼろげに感じさせる。

 そして「ok 観ようぜベランダからの光景」の部分だけトラックにスパイスが加わるのだが、これはBIMの「Veranda」というSTUTSプロデュースの曲がサンプリングされている。ダブルミーニング、というより二層の仕掛けがなされている。

 ベランダは『まめ夫』内で、よく外れる網戸や「布団が吹っ飛んだ」光景など、たびたび使われてきたモチーフ。7話では慎森がとわ子とワイン片手に談笑をするシーンがベランダである。

 普段は皮肉ばかり言う慎森が、ユニークな例えでとわ子への好意を素直に伝える場面が印象的だった。厳密に言うと、あの場所には屋根がないので、ベランダではなくバルコニーなのだが、ここで一旦BIMの「Veranda」を聴いてみよう。

 「ため息が溢れると/君はいつも現れて/ベランダでなら話せそうだ/秘密にしてたことでも」

 BIMはフックでこう歌っている。つまり、おそらくは偶然ながらも一致を見せる自身の曲へと、STUTSと共に目配せをしていたのだろう。

 話を「Presence」に戻そう。続いて「一向に解けないパスワード」というリリックに注目したい。

 パスワードと言えば、1話目で亡くなった母のパスワードを元夫たちに聞いて回るエピソードを思い出させる。1話終盤で母のパスワードは解け、とわ子は、他界した母の呪縛から解きはなたれたのは明らかだ。

 しかし、7話のとわ子は周囲の人間の健康を妙に気遣うところから、突然の病で、身近な人を失ったショックが尾を引いていることがうかがえる。そしてラジオ体操で時々目が合うだけの男(オダギリジョー)と、偶然出会い急接近するシーンでも、1年も経つとかごめを忘れてしまう罪悪感を明かしていて、とわ子がその死に囚われているのも感じる。

 それを「解けないパスワード」としているのだろう。

 そんな男の言葉から救いを見出したのか、とわ子は自分が涙を流していることにすら気づかない。男は優しく、とわ子へハンカチを差し伸べたその夜、彼女は久しぶりにソファではなくベッドで、歌いながら幸せそうにひとり眠りについた。「君が唄い寝静まる頃」というリリックは、そのシーンに触れているのかもしれない。

 また唄とは、7話で進学を理由に家を出る1人娘の名前でもある。

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