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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.637

映画プロデューサーと詐欺師は紙一重の違い? 豪華共演『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』

人生を変えてしまう映画という名の魔物

映画プロデューサーと詐欺師は紙一重の違い? 豪華共演『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』の画像3
実写版『マッハGoGoGo』に主演したエミール・ハーシュは敵対するプロデューサー役。

 映画プロデューサーは、限りなく詐欺師に近い職業だ。映画プロデューサーは自分の脳内で思い描いた夢を、スタッフやキャスト、そして出資者たちに熱く語る。個人が抱く妄想を、手八丁口八丁で共同幻想にしてしまうのが映画プロデューサーの仕事だ。映画が完成し、劇場公開されれば問題ないが、途中で頓挫すれば、映画プロデューサーはただの「詐欺師」となってしまう。劇場公開までたどり着いても製作費を回収できないと、やはり責められることになる。借金を返済するために、さらに無謀な企画を立て、借金地獄に陥ってしまいがちな非常に因果な職業である。

 実際に映画製作を騙った詐欺事件や映画ファンドを喰い物にした悪質な事件も起きている。『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)で有名なジェゼッぺ・トルナトーレ監督の『明日を夢見て』(95)は、映画俳優のスカウトマンを名乗る男が田舎で暮らす村人たちをカメラの前に立たせ、彼らからオーディション費を巻き上げる詐欺事件の物語だった。映画は、映画製作に関わった人も、その映画を観た人たちの人生までも変えてしまう罪作りなメディアである。生き血の代わりに、夢と才能を吸い取ってしまうヴァンパイヤのようなモンスターだ。でも、その罪深さ、業の深さゆえに、映画は人々の心を捉えて離さない。

 大勢のスタッフやキャストが驚くほどの情熱と時間を捧げた映画は、その内容がバカバカしく、くだらないほど映画マニアの心はときめく。バカバカしい映画を、くだらない映画を、もっともっと観たい。我々市民がB級映画やC級映画を楽しむ喜びを、自治体の首長たちが一方的に奪う権利は認められていない。映画館に営業自粛を強いる不条理な要請は、即座に撤回してほしい。

(文=長野辰次)

映画プロデューサーと詐欺師は紙一重の違い? 豪華共演『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』の画像4『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』
監督・脚本/ジョージ・ギャロ 共同脚本/ジョシュ・ポスナー
出演/ロバート・デニーロ、トミー・リー・ジョーンズ、モーガン・フリーマン、ザック・ブラフ、エミール・ハーシュ、ケイト・カッツマン
配給/アルバトロス・フィルム 6月4日(金)より全国ロードショー
(c)2020 The Comeback Trail,LLC All rights Reserved
https://comeback-hollywood.com

最終更新:2021/05/29 14:00
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