ベトナム人技能実習生の過酷な実態を描いた映画『海辺の彼女たち』現代日本で現実に起こる奴隷労働の実態
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日本で働く外国人労働者は172万4328人(2020年10月現在、厚生労働省調べ)で、ベトナム人労働者が最も多く44万3998人と全体の25.7%を占め、前年比10.6%の増加を見せた。
長年にわたり、国内の外国人労働者の一位を占め続けてきた中国は41万9431人で2位にランクダウンし、24.3%であった。ベトナム総合情報サイト「VIETJO(ベトジョー)」の2月1日配信の記事によると、ベトナム人労働者の内訳は、技能実習生が21万8600人と全ベトナム労働者の49.2%と約半数を占める。
そんなベトナム人技能実習生を主人公にした、日本・ベトナム合作の映画『海辺の彼女たち』(監督・藤元明緒/ふじもと・あきお)が5月1日から上映され話題を呼んでいる。
物語は技能実習生として来日したベトナム人女性のアン、ニュー、フォンの3人が、派遣先から逃げ出すシーンから始まる。それまで彼女らは三カ月間、一日15時間、土日も休めず、しかも残業代さえ支払われず働かされていた。
ベトナム人ブローカーの手引きで、東北の漁村に逃げ込んだ3人は、不法就労者として働き始める。雪の降りしきる人手不足の漁港で、出荷の手伝いや漁具の手入れをする日々を送る。時に日本人に怒鳴られながら、彼女らは懸命に働き続ける。やがて、フォンは自身の体調の変化に気づく――来日前に妊娠していたのだ。病院に行っても在留カードも健康保険証もない彼女は診察してもらえない。病院に行くために、同じベトナム人から偽の在留カードと保険証を5万円で買い取ることを決意するが、特急料金5千円の上乗せを請求されたりする。
等身大のベトナム人女性が演じる技能実習生の生活はリアリティーがあって、ドキュメンタリーを見ているような錯覚を覚えた。
映画のプロデューサー、渡邉一孝さんによると、主演を演じた3人には撮影現場に入る前、同胞のベトナム人技能実習生と同様にベトナムの日本語学校に通ってもらい、日本のことを数カ月勉強してもらったという。加えて彼女らは、実際のベトナム人技能実習生とじっくり話し込み、役作りに生かした。撮影の舞台となったのは青森県津軽半島の北にある外ヶ浜町で、昨年2020年2月、一カ月かけて撮影された。
絶えない技能実習生の失踪
すべての技能実習生の受け入れ先がブラック企業というわけではないが、少なからずの技能実習生が劣悪な環境に置かれ、耐えきれなくなり、失踪するケースが後を絶たない。
ホーチミン郊外にある技能実習生送り出し機関の訓練校に見学に行った時に見た、技能実習生の心得を説いた張り紙には、①嘘をつかない②時間を守る、というありきたりの文言の後に、「失踪しない」と書かれていた。
実際、技能実習生活の生活は大変なようだ。だから、捕まり強制送還される危険があっても、逃げ出して不法労働者となり日本で働き続ける道を選ぶベトナム人が続く。
映画にも登場した偽造した在留カードに保険証。不法就労で働き続けるベトナム人には不可欠で、そんな彼らの弱みに付け込んで、偽の身分証明書を売りつけるのも同じベトナム人だ。
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