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『大豆田とわ子』に食われる『着飾る恋』…霞む“キラキラ系ドラマ

『着飾る恋には理由があって』
『着飾る恋には理由があって』公式サイトより

 “キラキラ系”火10ドラマが、21時台からの流れに苦戦している。
 
 川口春奈主演、おしゃれなシェアハウスに集う魅力的なキャラクターたちが織りなす火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系)。シェアハウスの同居人には横浜流星丸山隆平、中村アン、夏川結衣、さらに真柴の憧れる社長役には向井理と共演者も豪華で、TBSが誇ってきた火曜ドラマ枠にふさわしいきらめきに満ちている。
 
 その『着飾る恋』のきらめきが仇となり、思わぬ伏兵に脅かされている。伏兵というのは『着飾る恋』の放送直前、火曜の21時から放送されている『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)だ。松たか子主演、その脇を固める「元夫」を松田龍平、東京03の角田晃広、岡田将生とこちらも豪華な顔ぶれだが、毎回のストーリーがことごとく視聴者の心を抉ってくるのだ。
 
 特に『着飾る恋』第5話放送前の『まめ夫』では、とわ子(松たか子)が親友のかごめ(市川実日子)を亡くすという衝撃的なエピソードが淡々とした調子で描かれ、視聴者の感情をかき乱していた。SNS上では「まめ夫から着飾る恋への気持ちの切り替え方を教えて!」「まめ夫を処理しきれず着飾る恋に集中できない」「まめ夫を見返して呆然としてたら着飾る恋が終わっちゃってた」など、とても『着飾る恋』を見られる状態ではなかったという視聴者も少なくなかった。
 
 しかし、それも無理はないだろう。『まめ夫』の脚本を担当しているのは数々の名ドラマを手がけている坂元裕二だ。坂元といえば、90年代に若くして『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)の脚本を書いて大ブレイクした大人気脚本家。一度テレビ業界から離れたが、復帰すると従来のトレンディドラマとは違う社会問題を扱ったドラマを次々と作っている。『最高の離婚』(同)や『カルテット』(TBS系)などに代表される、重苦しさとトレンディドラマ由来の軽快な作風が組み合わさった作品は独特で、まさに「坂元ワールド」といった雰囲気を醸し出している。『恋はつづくよどこまでも』(同)など話題作を手がける脚本家という意味では『着飾る恋』を担当する金子ありさも負けてはいないが、実力差は明らかだ。
 
 放送時間でも先手を打たれるかたちとなってしまった『着飾る恋』は、明らかに分が悪い。ターゲットとする世代、求められている方向性などすべてが違うとはいえ、深みのある人間ドラマのあとに見る「胸キュン」や「キラキラ感」で飾られた物語にはどうしても軽薄な印象を抱いてしまう。『着飾る恋』がファンタジーのようだと揶揄される要因のひとつは、ベクトルのまったく違う『まめ夫』との食べ合わせが悪さにもあると言えそうだ。
 
 今後も視聴者たちの心が『まめ夫』に奪われたままなんてことが続けば、『着飾る恋』の視聴率に悪い影響が出かねない。TBSとしては心中穏やかじゃないだろう。

■番組情報
火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』
TBS系 毎週火曜日22時~
出演:川口春奈、横浜流星、丸山隆平(関ジャニ∞)、中村アン、山下美月(乃木坂46)、高橋文哉、向井理、夏川結衣、飯尾和樹(ずん)、赤ペン瀧川、木本夕貴ほか
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、棚澤孝義、府川亮介
プロデューサー:新井順子
音楽:神山羊、兼松衆、田渕夏海
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikazarukoi_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2021/05/25 11:00
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