能登町の“巨大イカモニュメント”批判は現時点では的外れ―過疎化する地方行政の切実な実情と狙い
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意外と戦略的?能登町の狙いは当たるのか
――しかし素人考えでは「そのお金で、もっと直接的にイカを全国に売り出す仕組みはつくれなかったんだろうか」と思ってしまいます。
小笠原 そこなんです。実は、能登町はその点でこれまで何もやってこなかった町ではないんです。継続的に“イカの街”をPRしてきてるんですね。モニュメントが設置された施設「イカの駅つくモール」は2020年6月にオープンし、報道や「つくモール」のWebを見ると順調に事業を進めているのがわかります。商品のオンライン販売もやっているし、今年4月には「イカ丼」をクラウドファンディングで発売し、30日間で211万円の支援金調達に成功しています。こうした積み重ねの上に、モニュメントができているんですね。
――中日新聞によれば、同施設では1年で来場者数7万人という計画目標を半年で達成しているようですね(20年12月時点で6万8000人)。たしかに、急にモニュメントだけつくったわけではないんですね。そう言われてみればこちらの「のとマート」のウェブサイトも、かなり使いやすくできています。
小笠原 「地域のブランドってなんだろう」「ウチの目玉産業はなんだろう」と地元の皆さんがきちんと考えて、政策を打って施設をつくり、サービス提供してウェブサイトつくって通販準備して、最後にダメ押しとして巨大なイカを設置しよう! ということになったのなら、外部はなんにも批判をする余地がないんですよ。
地方創生のこうしたお金の使い方は、なかなか理解し難いところなのかもしれません。メディアの中にも、「国からもらったカネを地方公務員がわけのわからないことにじゃぶじゃぶ使って、とんでもない」という話に落とし込みたい人が少なくないんだと思いますが、そうではないんです。地方創生の枠組みや今回の補助金の位置付け自体の問題とはまた別のことです。
これははっきり言っておきますが、圧倒的大多数の自治体の職員さんは、「1円も無駄にしないぞ」と真面目に取り組んでいます。地方創生の取り組みを批判するときは、その地域がどういった産業で成り立ち、どういう課題を抱え、これまでどう取り組んできたのか、念頭に置かなければいけません。
――大きすぎるイカというファニーさに目を奪われず、その裏側にあるものを見る必要がある、と。
小笠原 もちろん、今回の試みがパッと見で“スベって”ないとは私も言いません。でも「つくモール」について調べていくうちに「これはかなり周到にやってきた自治体なのかもしれない」と思ったんです。自分たちの価値をどう向上させるか、よく考えてきている。だから今回の件も、これから出る結果で判断するしかない。これから半年後、1年後、あるいはコロナ禍が収まったあとに、イカの駅つくモールに観光客が集まっていたら良い交付金の使いみちだったということですから。
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