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日刊サイゾー トップ  > 過疎化する地方行政の切実な実情と狙い
白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」【4】

能登町の“巨大イカモニュメント”批判は現時点では的外れ―過疎化する地方行政の切実な実情と狙い

能登町の巨大イカモニュメント批判は現時点では的外れ―過疎化する地方行政の切実な実情と狙いの画像1
能登町観光ガイド

 いま日本の各地で「地方創生」が注目を浴びている。だが、まだ大きな成功例はあまり耳にしない。「まちおこし」の枠を超えて地域経済を根本から立て直すような事例は、どうしたら生まれるのだろうか?

 本企画では、栃木県小山市にある白鴎大学で、都市戦略論やソーシャルデザイン、地域振興を中心とした研究を行う小笠原伸氏と、各地方が抱える問題の根幹には何があるのかを考えていく。

 第4回目は、内閣府が「新型コロナ対応に奔走する地方公共団体の取組を支援するため」に組んだ地方創生臨時交付金をつかって、巨大なイカのモニュメントを設置し注目を浴びた石川県能登町の取り組みについて、聞いた。

◇ ◇ ◇

――石川県能登町で、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金2500万円を投じて巨大なイカのモニュメントが設置されたことが大きな話題になっています。イギリスのBBCなど国外のメディアでも取り上げられ、物議を醸しました。地方創生の専門家としては、この一件を率直にどうとらえていますか?

小笠原 あまり過度な批判はしないほうがいいと判断を留保して見ています。正直、自治体さんがちょっとかわいそうだな、と。

――メディア含め批判の声が多かった印象ですが……。

小笠原 今回のコロナ対応のための地方創生臨時交付金については、内閣府から事前に「活用事例集」が提示されているんですね。これを見ると、「PCR検査等導入事業」「医療従事者支援事業」といったストレートな感染症対応もあれば、地域経済の維持を目指す「地元産材活用支援事業」や「能、映像、ライブ、プロスポーツイベント、動物園等の無観客配信支援事業」といったものもあります。そしてその中には、「観光/シティプロモーション活動事業」もある。

小笠原 つまり国の側から、「コロナで観光客が減ったので地域のプロモーションを頑張るために使いましょう」と提示しているんです。自治体としてはそのメニューから選択して事業をやっているわけで、交付金の使いみちとしてそこまで筋は悪くないと言えます。

――直接的な感染症対策のためだけに、使わなければいけないお金ではなかった、というわけですね。

小笠原 もちろん、数兆円という補正予算をすべてコロナ対策につぎ込んだほうがいい、という考えがあることも理解できます。ですが、人口が減って衰退の一途をたどっている自治体さんからすれば、コロナ禍にあっても地方創生の面で何かしら施策を考えていかなければならないのが現実です。

 今回、RESAS(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部が運営する地域経済分析システム)などで能登町のデータを確認してみました。それによると、現在の人口は1万6000人程度で、そのうち老年人口と生産年齢人口がほぼ一緒なんです。この時点で苦しいのに、長期的にも人口が減っていく道筋しか見えない。そんな町がコロナで観光客が減ってより苦しくなったとき、一縷の望みをかけて交付金を利用した――それがこういう叩かれ方になるのは、いささか気の毒です。このあたりは、“大都市に住んでいる人間の感覚”で見ていては勘違いしてしまうところだと思います。

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