地獄でこそ輝くデスマッチファイター・葛西純。満身創痍のプロレスラーが闘う理由『狂猿』
#映画 #パンドラ映画館
ベテランレスラーが闘い続けるモチベーション
欠場中はモチベーションが下がりまくり、「デスマッチED」状態となっていた葛西選手だったが、コロナ禍が吹き荒れる中、所属団体「FREEDOMS」が赤字覚悟で興行を再開することを決める。2020年6月、新木場1st RINGの客席を半分に減らしての復帰戦。「本当は満席の後楽園ホールでやりたかった」と語る葛西選手だが、客席からマスク越しの「葛西」コールを浴びると、表情が輝き始める。ホームセンターへ向かい、新しい凶器アイテム開発の意欲も湧いてくる。
葛西選手のメイクは、右目のマツゲは映画『時計じかけのオレンジ』(71)の主人公アレックス、左目のカラコンはゾンビ映画をイメージしたものだ。ウルトラバイオレンスとゾンビのような不死身の生命力を、その両目に宿している。
彼が闘っている相手は、他団体からも襲来する巨漢レスラーや活きのいい若手レスラーたちだけではない。コロナ禍のために大きな声援を送ることができずにいるファンたちの萎縮した心情や、46歳の誕生日を迎えた葛西選手自身に迫る年齢の波ともガチンコで向き合っている。
「お客さんにコロナのことを忘れさせられないのは俺っちの負け」
「まだ若手には抜かれたという気はしない」
「(46歳になったのは)レベル46になったと思えばいい。葛西選手は死ぬ直前に全盛期を迎える」
おっさん世代にとって、実に頼もしいコメントの数々が葛西選手の口からこぼれ出る。
デスマッチのリングは当然ながら痛いし、大怪我をしかねない恐怖が待っている。でもそういったネガティブ要素以上に、葛西選手はデスマッチのリングから「生きる実感」を得ているという。地獄でこそ輝くパンクロッカー。葛西純にはそんな血まみれな華やかさがある。
『狂猿』
監督・編集/川口潤
出演/葛西純、佐々木貴、藤田ミノル、本間朋晃、伊東竜二、ダニー・ハボック、竹田誠志、杉浦透、佐久田俊行、登坂栄児、松永光弘
配給/スペースシャワーフィルムズ PG12 5月28日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
c)2021 Jun Kasai Movie Project
https://kyoen-movie.com
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