トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 奥山和由が語る「女優たち」
映画『女たち』公開記念インタビュー

あの話題作のヒロインらはこうして口説かれた 映画プロデューサー奥山和由が語る「女優たち」

たけし映画のヒロインたちはこうして決まった

――奥山プロデューサーは、北野武監督を監督デビューさせたことでも知られています。男の世界のイメージが強い北野武監督作ですが、『その男、凶暴につき』の川上麻衣子、『3-4X10月』(90年)の石田ゆり子も、それぞれ不思議な存在感があります。

奥山 たけしさんが主演も兼ねた『その男、凶暴につき』は、当初は深作欣二監督が撮るはずだったのが、クランクイン直前に降りることになり、僕から「たけしさんが撮りますか?」と持ち掛けた作品でした。たけし色を全面に出していこうと、たけしさんと相談しながら配役をすべてゼロからやり直して、その中で川上麻衣子さんも決まりました。

 『3-4X10月』の石田ゆり子さんの場合は、プロデューサーとして推しました。たけしさんの振り切った作品になりそうだったので、マイナー感があまり強くならないようにと、スタンダードな美女で、清楚な雰囲気のある石田ゆり子さんを推薦し、たけしさんも乗ってくれたんです。『ソナチネ』(93年)の国舞亜矢さんは、たけしさんらしい大抜擢です。

――奥山プロデューサーが映画づくりに大変な情熱を注いできたことは、とても分かりました。『海燕ジョーの奇跡』(84年)の藤谷美和子、『RAMPO』(94年)の羽田美智子といった女優たちとの噂が、マスコミに報じられたこともあります。その点についてもお聞きできますか?

奥山 僕が男優とずっと一緒に過ごしていても、そのときはマスコミは報じないんですよ(笑)。作品から生々しい美しさを引き出すためなら、プロデューサーはどんな努力も惜しみません。時間が経つのも忘れて、打ち合わせに没頭します。他の人がカメラを前にして「噂になるようなことは何もしてません」と弁明しているのを見ると「いや、違うだろう」と思うけど(笑)、自分の場合だと「あっ、外から見るとそんな関係に思われるんだ」とふと気づくものなんです。

 俳優の心に火が点いてくれないと、映画は始まりません。男優が熱を帯びるのも大事ですが、基本的には女優が燃え上がった方が美しい映画になる確率が高いように僕は感じます。小津安二郎監督は女優の原節子さんと同じ旅館にずっと泊まっていましたし、大島渚監督は助監督時代に女優の小山明子さんと結婚しています。今はそういうことが、すっかり減りました。男女の関係も含めて、外部から騒がれないように、配慮に配慮を重ねながら映画を作っている。だから、今の日本映画はぼんやりした作品ばっかりになってきているんじゃないのかなと思います。

――映画製作も、コンプライアンスに気をつけなくてはいけない時代になりました。

奥山 『恋文』(85年)のとき、主演の萩原健一さんが写真誌の記者に対して「てめぇの右目と左目、どっちからくり抜いてやろうか」と言ったかどうかの釈明会見に僕も同席したことがあります。会見での萩原さんは「覚えてないけど、俺がそんなことを言っても不思議じゃない感情だったことは覚えている」と言ったわけです。ショーケンの言ったことが正しいとか、かつての俳優はすごかったとかを、僕は言いたいわけじゃないんです。僕の師匠であった深作監督は「映画は不良少年のためのものだ」と語っていました。僕が今も映画を作り続けている理由はそれなんです。誰かに批判されても、自分のやりたい映画を自由に作る。そんな熱い映画を観て、他の人たちも何かを始めよう、新しいものに挑んでみようと感じる。そういうきっかけに、映画がなれればいいなと思っているんです。

映画『女たち』
製作/奥山和由 監督/内田伸輝 主題歌/荒木一郎
出演/篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズ、筒井茄奈子、窪塚俊介
配給/シネメディア、チームオクヤマ 6月1日(火)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
©「女たち」製作委員会
onnatachi.official-movie.com

●奥山和由(おくやま・かずゆき)
1954年生まれ。『ハチ公物語』(87年)や『遠き落日』(92年)などの大ヒット作を放つ一方、『丑三つの村』(83年)、『海燕ジョーの奇跡』(84年)、『無能の人』(91年)、『いつかギラギラする日』(92年)、『GONIN』(95年)、『うなぎ 』(97年)などの異色作&話題作も次々と手掛けた。北野武監督とは『その男、凶暴につき』(89年)、『3-4X10月』(90年)、『ソナチネ』(93年)と初期3作でタッグを組んでいる。『RAMPO 奥山バージョン』(94年)では監督デビューも果たした。チームオクヤマ設立後、『地雷を踏んだらサヨウナラ』(99年)、『真幸くあらば』(10年)、『ほとりの朔子』(14年)、『銃』(18年)、『エリカ38』(19年)、『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(20年)など多くの映画をプロデュースしている。

最終更新:2021/09/15 20:23
1234
ページ上部へ戻る

配給映画