広島大学と京都大学の研究グループ、新型コロナウイルスを無力化する中和抗体作成技術を開発と発表
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新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、一つの朗報が届いた。
広島大学と京都大学の研究グループが、新型コロナウイルスを無力化する中和抗体を10 日間で作成する技術を国内で初めて開発した(参照:https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/164430/210514_pr01.pdf)。この技術では、新型コロナウイルスの変異株についても、無力化できるという。
広島大学大学院の保田朋波流教授らと京都大学の共同研究グループは、広島県の庄原赤十字病院および県立広島病院と共同で、複数種類の新型コロナウイルス変異株に結合してウイルスを無力化する完全ヒト抗体を、10日間で人工的に作り出す技術を新たに開発した。
中和抗体は、ウイルスに結合して無力化する抗体。共同研究グループは新型コロナウイルスに感染し回復した重症度の異なる患者(23歳から93歳)を対象に血液を採取し、血清中に含まれる抗体の分析を行った。
その結果、感染から2週間以上経過している全ての回復患者が、ウイルスに結合するIgGと呼ばれる抗体を獲得しているにも関わらず、その約4割はウイルスを中和する活性が弱いか検出感度以下であることがわかった。また酸素吸入を必要とした重症者とそうでない軽症者で比較してみると、重症者の8割が中和抗体を獲得していたのに対し、軽症者では2-3割にとどまった。
この結果、感染後2週間以上経過し、かつ重症患者由来の血液を使用することで中和活性の高い抗体を取得しやすいものと考え、高い中和活性を示した重症患者の血液検体を優先的に選び、中和抗体をもったB細胞を独自に開発したプローブを用いて選別・単離した。細胞1個ずつから抗体遺伝子のほぼ全長を重鎖と軽鎖を同時にPCR増幅し、新型コロナウイルスに結合するヒトIgG抗体を人工的に作成した。
こうして作成された抗体から従来の新型コロナウイルス(武漢型)に強く結合する32種類の抗体を選び出して解析した結果、そのうち97%の抗体は武漢型だけでなく英国型の変異株にも強く結合することが明らかとなった。
一方で、多重変異を有する南アフリカ型の変異にも結合する抗体は63%にとどまったものの、これらの結果は南アフリカ型の変異株などの多重変異ウイルスに対しては自然感染やワクチン接種によってもたらされる抗体の効果が日本人においても弱まることを示唆している。
新型コロナウイルス感染者の血液からウイルスに結合する抗体遺伝子を取り出し、人工的に抗体を作り出す技術はこれまでにも報告されている。しかし、高い中和活性のある抗体の取得には、多数の血液検体から候補となる抗体を作成し選び出すために、時間と労力を要した。
今回の技術は目的とする抗体を保有する患者の特徴を明らかにし、作業工程を工夫することで、数名の患者から高性能な中和抗体を10日間で取得できるようになった。
また、これまで複数の変異株を無力化する中和抗体を作成する技術は確立されていなかったが、今回の技術を用いることで脅威となっている多重変異株にも結合する中和抗体を取得することに国内で初めて成功した。
同研究グループでは、今回取得した中和抗体について、実績ある製薬企業等との連携により早期の医薬品化を目指す。また引き続き、インド型の変異株などの新たな脅威となる多重変異ウイルスに対しても中和抗体の取得を目指す。
この技術を用いることで、今後新たな変異ウイルスが出現した際にも迅速に中和抗体治療薬を作り出せるようになり、感染者の死亡率低下や感染の封じ込めにつながることが期待でき、新型コロナウイルスの特効薬として期待できる。
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