国立感染症研究所、新型コロナ変異株、重症化リスクが1.4倍と調査報告―進む丁寧なデータ収集と分析で警告
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新型コロナウイルスの変異株、重症化リスクは従来株に比べて1.4倍とする調査報告を5月10日に国立感染症研究所(NIID)が発表した。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2551-lab-2/10354-covid19-45.html
NIIDは2月10日から5月6日までの期間に国内で報告のあった新型コロナ感染の20万7128例を対象に、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスの重症化リスクを解析した。
PCR検査などでN501Yへの感染が確認されたのは1万5000人あまりで、このうち重い肺炎や多臓器不全など重症だったのは475人だった。届け出があったときに重症であるリスクを分析すると、重症化リスクは従来株などと比べて1.40倍高く、さらに40歳から64歳では1.66倍高かった。
NIIDでは、従来のウイルスの場合、データが入力されないケースなどもありこの結果だけで重症化リスクを正確に評価するのは難しいとしているものの「現時点では、重症度が高くなっていることを想定して対策を取る必要がある」と、警鐘を鳴らしている。
また、NIIDは5月上旬までのデータを基に、変異株の広がりを推定した結果、全国各地で9割前後が変異株に置き換わっていると見られるとする、分析結果をまとめた。
国内で最も早く変異ウイルスが広がった大阪府と兵庫県、京都府では、3月から4月にかけて急速に変異株が広がり、4月初めには7割あまりになったあと、現在ではほぼすべてが変異株に置き換わったと推定した。
東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県、北海道、愛知県、福岡県、沖縄県でも4月中旬ごろから変異株の感染が急速に拡大し約9割となり、これまで比較的変異株の感染が少なかった宮城県でも、すでに9割近くとなったと見ている。
さらに、NIIDはインドで確認された変異株について、国内で大半を占めるようになった変異株と同程度に感染力が高い可能性を考慮し、5月12日付で「懸念される変異株」に位置付けた。
NIIDでは、2020年11月に英国南東部地域で新型コロナウイルスの新規変異株(英国型)が報告されて以降、英国内で急速に増加し、その後世界的に感染拡大を起こした。変異株は、従来株と比較して実効再生産数が43~90%高く、また死亡リスクを55%上昇させるという報告があるとしている。
さらに、南アフリカから最初に報告された変異株、日本ではブラジル渡航者から検出された変異株、フィリピンから報告された変異株は、免疫逃避との関連が指摘されており、ワクチンの効果が減弱する可能性が指摘されているとしている。
海外の研究例として、英国の大規模データベースを用いた観察研究では、変異株は従来株と比較して死亡リスクが55%高かったという報告、あるいは64%高かったという報告、また、欧州連合加盟7か国で実施された観察研究では、変異株は従来株と比較して入院リスクは1.7倍、集中治療室入室リスクは2.3倍だったという報告を紹介している。
その上で、これらの結果は、現時点では変異株の重症度が従来株と比較して高くなっていることを想定して、感染対策および治療を行う必要があることを示しているとしている。
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