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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > ただのキラキラドラマじゃない?『着飾る恋』

『着飾る恋には理由があって』が伝えた「望まない妊娠でも隠さなくていい」という価値観

『着飾る恋には理由があって』
『着飾る恋には理由があって』公式サイトより

 川口春奈横浜流星の共演が華やかな『着飾る恋には理由があって』(TBS系)。毎回“胸キュン”火曜ドラマ枠に恥じないキラキラっぷりを見せていると思いきや、5月11日に放送された第4話で唐突に重たいテーマがぶち込まれた。シェアハウスの同居人である羽瀬彩夏(中村アン)の妊娠疑惑だ。

望まない妊娠を他人と共有することに嫌悪感を覚える視聴者も

 羽瀬は近所の高級スーパーでアルバイトをしながら現代アートを描く芸術家の卵という役どころだ。第4話では羽瀬が急に体調を崩し、真柴(川口春奈)にしばらく生理が来ていないことを告白する。妊娠の可能性があるとすれば、相手は付き合っていないがいい関係にあると思われていたバイト仲間。しかし相手にとって羽瀬は“2番目”であり、相手は別の人との結婚を周囲に明かしていたため羽瀬は何も言えなくなってしまう。同居する真柴や駿(横浜流星)、陽人(丸山隆平)、香子(夏川結衣)の力を借りて、羽瀬は自分とどう向き合っていくのか……というストーリーだ。

 結局は妊娠していなかったというオチなのだが、一部の視聴者が強い違和感を持ったのが、羽瀬が早い段階から同居人たちを巻き込んでいく展開だった。シェアハウスの住人総出で妊娠検査薬を買いに行ったり、判定結果を見るのが怖いから代わりに見てほしいと頼んだり。羽瀬の行動の非常識さに、「尿をかけた検査薬を他の男に見せる?」「産むのもおろすのも自分なんだから自分で見ろ」と嫌悪感を示す視聴者もいた。

一人で抱えこまなければいけない理由って?『着飾る恋』が伝えた新しい価値観

 だが、妊娠したかもしれない事実を隠さなくてはいけない理由は何だろうか。そのとき他人に頼ってはいけない理由は? 現実問題、未婚の妊娠は一人で抱え込むという辛い一択になりがちだ。『着飾る恋』のように、他人の妊娠疑惑に、男も女もなくオープンに関わっていくさまは非常識にさえ思えるが、ドラマが「こんな選択肢があってもいい」というメッセージを視聴者に対して放ったことには価値があったように思える。

 ドラマでは勇気がないと検査結果を見られない羽瀬に、年長者の香子は自分で確認するように促して<しっかりしなさい、羽瀬ちゃん。強くなれ>と抱きしめた。陽性と勘違いしていた真柴たちがかける言葉に悩むなか、駿は迷いのない表情で<大丈夫。俺、手伝うよ><羽瀬さん一人ワンオペにはしない。だってこの家だったらファイブオペじゃない?>と声をかけた。駿の一見バカな発言は<軽々しい><無責任だ>と同居人からも非難轟々だったが、そのまっすぐな気持ちに救われた気がしたのは羽瀬だけではないだろう。

 望まない現実、デリケートな妊娠疑惑さえシェアすることで乗り越えられるのなら、ドラマのように他人同士がつながる意味は大きい。羽瀬を演じる中村アンの泣き笑いの表情がそれを物語っていた。

■番組情報
火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』
TBS系 毎週火曜日22時~
出演:川口春奈、横浜流星、丸山隆平(関ジャニ∞)、中村アン、山下美月(乃木坂46)、高橋文哉、向井理、夏川結衣、飯尾和樹(ずん)、赤ペン瀧川、木本夕貴ほか
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、棚澤孝義、府川亮介
プロデューサー:新井順子
音楽:神山羊、兼松衆、田渕夏海
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikazarukoi_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2021/05/18 13:30
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