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King & Prince「Magic Touch」をトラックメイカーが徹底分析! ジャニーズ世界進出のために必要な“創意工夫”とは?

King & Prince「Magic Touch」をトラックメイカーが徹底分析! ジャニーズ世界進出のために必要な創意工夫とは?の画像1

 ジャニーズの人気ユニットKing & Princeの新曲「Magic Touch」が本日リリースされた。キンプリ初の「英語詞シングル」という試みだが、彼ら自身の高いダンススキルを遺憾なく発揮している反面、曲自体は凡庸な印象も否めない。

 そこで今回は、この楽曲についてトラックメイカーで著述家の小鉄昇一郎氏に分析してもらった。

──小鉄さんには以前、Sexy Zoneの「RIGHT NEXT TO YOU」についてレビューをしていただきました。

 最近のジャニーズは「世界進出」を目標に掲げるグループが増えてきていて、「英語歌詞」のシングルリリースが続いています。今回取り上げるキンプリの新曲も全編英語歌詞ですし、彼らも世界進出を目標にしています。そこで、世界の音楽シーンと照らし合わせて楽曲について分析していただこうと思います。

小鉄昇一郎(以下、小鉄) キンプリといえば「王道のジャニーズ系」というイメージでしたが、今回は少し違っていて、曲調のほうもぐっとダンス・ミュージック、クラブ風ですね。

──曲自体は数年前のNCTやジャスティン・ビーバーに似ている、という声もネットにはあるようですが……。

小鉄 わかりやすく誰々を意識してるという感じは、少なくともトラックを聴いた印象では感じませんでした。全編で鳴っている「ブーン、ブンブーン」という非常に低いベースの音ですが、これはTR-808というドラムマシンの、バスドラムの音を長く引き伸ばし、そこに音階を付けて作られる“サブベース”という音色です。そのサブベースと、サイレンのような印象的な音色のシンセサイザーによる電子音の組み合わせ、というのは、90年代以降のアメリカ、特に南部のヒップホップ・シーンで多用されて来ました。カニエ・ウェストの「Heartless」なんかは、わかりやすいかもしれません。

 マイアミベース、クランク、バウンス、ハイフィー、トラップなどなど、時代や地域によってその中でもバリエーション的にジャンルがありますが、アメリカ南部のヒップホップが、ポップスやR&Bなどのメインストリームの音楽にも影響を及ぼすほど人気になった2000年代以降は、もはや「サブベースにサイレン音のようなシンセ」のトラックは、今日ダンス・ミュージックを作る上でのひとつの定型となっています。

──なるほど。「Magic Touch」は“ヒップホップナンバー”と銘打たれてますが、もう少し詳細にジャンル分けすると何に当てはまるんですか?

小鉄「Magic Touch」のトラックは、強いてジャンル名で言うと「フェスティバル・トラップ」とか「EDMトラップ」と呼ばれているようなサウンドだと思いますが、具体的にこのジャンルを取り入れてる、と言うよりは、ここ10年ほどのサウンドの、平均的な作りをしていると思います。そういう意味では新規さや冒険心よりは、安定感を目指してるようです。そのあたりは、キンプリというグループがもともと持つ“王道路線”ゆえのものかもしれませんが。

──では、ミュージックビデオのアートワークについては、いかがでしょうか?

小鉄 ビデオに出てくる、鮮やかなグラデーションのライティングに、日本語タイトルのネオンは、ヴェイパーウェイブと呼ばれている2010年代から流行している音楽ジャンルのセンスを感じますが、ヴェイパーウェイヴがアンダーグラウンドで注目されていたのは2014年くらいまでの時期で、それ以降は、音楽に限らずCMやファッションなどでもこのビジュアル・センスがある種のパターンとして定着しています。曲、映像ともに「近年の定番」を手堅く押さえた、という印象です。今後の展開の予告編的な感じに聴こえるので、これに続く2曲目でどういう曲を持ってくるんだろう? と個人的には思いました。

──その“手堅さ”ゆえなのか、個人的には曲もMVも既視感が拭えなかったというのが正直な感想です。私個人的にはキンプリを推したい気持ちもあるのですが、どうしてもK-POPの後をなぞっているだけにも見えるというか……(苦笑)。彼らの持ち味を出しつつ、世界へアプローチするには、どうすればいいと思いますか?

小鉄 トラックはこのままで、歌やコスチュームは王子様路線、って曲が出てきたら面白い気がしますが、ちょっとキッチュ過ぎるかも……(笑)。南部ヒップホップから始まって、トラップ系に至るまで、この手のサウンドは「ダーティ・サウス」という言葉もあるくらい、ストリートの生々しい日常を歌ったものが多いです。過激なスラングたっぷりに、酒や車、ギャングのリアルな恐怖、露骨なセックス描写がラップで描かれているものが多い。なので、サウンドはダーティだけど、上に乗っかってる歌はキラキラ王子様……というスタイルはかなりインパクトありそう。

──それはちょっと見てみたいですね!「Magic Touch」はダンスを際立たせるためなのか、衣装もかなりシンプルで、ジャニーズファンとしては少々物足りない気も。煌びやかな王子様衣装で、ゴリッゴリのヒップホップを踊ったら、今までにない化学反応が起きるかもしれません。

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