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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 失われた11年にけりを付けるYOU THE ROCK★

「この11年は無駄じゃなかった」失われた時にけりを付けるYOU THE ROCK★がILL-BOSSTINOと起こした化学反応

10年前の件の懺悔とノーディスを貫く今

――この曲に限らず、アルバムには懺悔の気持ちがいくつかリリックで見受けられます。聞きにくい質問ですが、逮捕の件(注:10年に現行犯逮捕)に関しては、やはり申し訳ないことをした気持ちは大きいですか?

YTR 本当に素直に、「心配をかけてごめんね、悪かったよ」っていう気持ち。「どっから話していいかわからないけど、今、俺はがんばってるからさ」みたいな。あと、最後のマーク・トウェインのくだりは、ほぼ韻は踏んでないんだけど、バトルMCやフリースタイラーに対する俺の気持ちなんだよね。今回のアルバムにディスの部分はひとつもないでしょ? 人を貶めるようなワードを入れるような気分にすらならなかったんだよね。

――アルバム後半の「LONESOME SOLDIER」、「T.O.U.G.H.」、「ILL中目黒BLUES」、「YOU KNOW HELL? I KNOW WELL」あたりの流れはすごく重くて、心の闇の部分を吐き出しているなと。

YTR 重いテーマかもしれないけど、逆にここは一番ダンスする場所なんだよね。トラックも含めてノリノリで、俺の中ではぶっ飛びながら、めちゃくちゃ踊っている感じ。苦しいことを吐き出しながら、幸せになっていくっていうかね。

――「YOU KNOW HELL? I KNOW WELL」では、イントロでECDの声がスクラッチで使われているのが結構印象的で。

YTR 今回のアルバムのスクラッチネタはBOSSがチョイスして、ダイちゃん(DJ DYE)がカットしてくれてるんだけど、もう最高だなって。

――今回、アルバムにはBOSSさんが何カ所か登場する以外、ゲストを一切入れなかったのは、最初の段階で決めていたことですか?

YTR 最初は「誰に参加してもらおうか?」ってBOSSと話していたし、ラッパーからのアプローチも多かったんだけど、完成が近づくにつれ、「もう誰も入れねーぞ」みたいになったんだ。今どき17曲っていうボリュームもないだろうし、フィーチャリングが一切ないこともよいかなと。

――今回のアルバムが出来上がって、プロデューサー的な立場としてBOSSさんの感想を聞かせてください。

「この11年は無駄じゃなかった」失われた時にけりを付けるYOU THE ROCK★がILL-BOSSTINOと起こした化学反応の画像4

BOSS 最高です。レコーディングする前のプリプロ段階で、もう作品としてのレベルに到達してたんで、完成がめっちゃ楽しみだったんですよ。俺自身、自分のレーベルで発売することで気持ちが入るし、一緒に作り上げることができて本当によかったです。

――今回の制作で「YOU THE ROCK★」というアーティストに対して、新たな発見はありましたか?

BOSS ユウちゃん自身の性格はもちろん、11年間苦労してきたことや、友達として付き合ってきてわかっていたことはあったけど、実際にライムになって出てくると、やっぱり聴こえ方も全然違う。一つひとつ発見もあるし、「ああ、なるほどね」って思ったこともたくさんありました。

――個人的な感想としては、言葉の一つひとつが突き刺さってくるし、歌詞カードを読まなくてもラップがしっかりと耳に入ってくる。そういう言葉のパワーは、昔と変わってないんじゃないかなと思いました。

YTR ヒップホップが俺をそうさせるんだよね。俺の意思とはまた別で、どうしても逃がしてくれない。ヒップホップがもたらす俺に対するエフェクトっていうかね。

――ヒップホップに突き動かされている感覚はありますか?

YTR もう、それしかない。はっきり言ってこの10年間、ヒップホップなんて嫌いだって思ってたし、ヒップホップをやってる奴なんか絶対に近づかないとも思ってた。

――ヒップホップの呪縛が、ある意味、悪い方向に……。

YTR 「どのツラ下げてお前来てるんだよ!?」って思われても困るから、(ヒップホップ・シーンに)入れなかったし、自分から身を引いてた。そうすると、どんどんと別れた女みたいに嫌いになっていって。テレビでヒップホップが取り上げられたりすると消してたもんね。

――そういった思いも含めて、今回のアルバムを完成させて、自分の中に溜まっていたものを吐き出せました?

YTR もちろん、吐き出した。

――浄化もされましたか?

YTR それはこれからだよね。お客さんの喜んでいる顔を見て、「ユウちゃん、お帰り!」とか言われたら、「ただいま!」って返したい。そのコミュニケーションを大事にして、みんなと明るい方向を目指したい。

――改めて11年ぶりのアルバムをTBHRから出せたことについて、今の率直な気持ちを聞かせてください。

YTR BOSS以外からのオファーだったら、多分引き受けてない。彼はライブやリリック、佇まい、生き様すべてにおいて、BOSSをスーパーMCだと思ってる。俺は孫悟空みたいに石の中で固まっちゃって、出るもんかって思ってたけど、BOSSに言われたからこそ出せたんだと思う。

――最初のアルバムの『NEVER DIE』が92年リリースで、その29年後に今回の『WILL NEVER DIE』がリリースされて。その間に紆余曲折あったわけですけど、それでも自分の中でずっと変わってないものはありますか?

YTR やっぱり、誰もやってないことをやるのが好きなところだね。逆にこの29年の中で俺にとって大きく変わったことは、俺の大事な人が亡くなっていること。石田さん(ECD)、DEV LARGE、OSUMI(SHAKKAZOMBIE)、ヒロシ君(DJ HIROnyc)、DJ KENSAWとかにしてもそうだし。ゴールデンエラのヒップホップを作り上げてきた、俺の大事な人たちがいなくなっちゃった。楽しいことも、うれしいことも、悲しいことも、ツラいこともあるんだけど、結局人は死ぬ。それだけは平等なんだよね。みんなが亡くなったことによって、それに気づかされた。だから、『WILL NEVER DIE』っていうタイトルには、そういうメッセージも込めてるんだ。

「この11年は無駄じゃなかった」失われた時にけりを付けるYOU THE ROCK★がILL-BOSSTINOと起こした化学反応の画像5

YOU THE ROCK★
WILL NEVER DIE
THA BLUE HERB RECORDINGS
5月12日発売

Twitter〈@YTR_official

最終更新:2021/05/13 17:00
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