「この11年は無駄じゃなかった」失われた時にけりを付けるYOU THE ROCK★がILL-BOSSTINOと起こした化学反応
#YOU THE ROCK★ #ILL-BOSSTINO
「ヒップホップが俺をそうさせる」YOU THE ROCK★の変わらぬマインド
――収録曲に関して、まずこのアルバムの中からパーティ・チューンの「MOVE THE CROWD, ROCK THE HOUSE」が先行でシングルカットされたのは結構意外でした。
YTR あれはBOSSが決めんだけど、やっぱり、俺にとってパーティアンセムっていうのは避けれないから。それはTBHRでもやるぞっていうのが、俺とBOSSとの間で絶対条件だった。
BOSS 今回の作品をTBHRでやることによって、THA BLUE HERB的なサウンドと、ユウちゃんのカラーがどういう化学反応を起こすかっていう楽しみがあった。でも、同時に本来持ってるユウちゃんの味を出さないと、つまんない結果になっちゃうからね。
――O.N.Oプロデュース作としても、そうしたタイプの曲はめずらしいですよね。
BOSS 俺がキックしないだけで、彼自身は昔からそういったトラックは提示していたからね。O.N.Oちゃんも無理して作っている感じではなかったし、ユウちゃんのテイストもあったからこそできたんだと思う。
――「MOVE THE CROWD ~」のリリックには自分自身の原点回帰みたいなものを感じました。
YTR 原点回帰というよりも、俺の定義だね。
――ヒップホップの定義?
YTR トラップやフリースタイルバトルとか、そういうの傍目に見ていて、ヒップホップのルールはこういうことだよ、っていうね。俺にしか歌えない、俺からのルール。原点回帰なのかもしれないけど、これが俺のヒップホップのマナー。
――そういったヒップホップ色の濃い曲がある一方で、「GO AROUND」ではインドへ行ったときの話が出てきたり。
YTR 俺はヒップホップ以外でも活動しているからね。
――ヘンタイカメラとしての活動ですね。
YTR そう。トランスだったりサイケデリックだったり。それで中国へ行ったりタイに行ったり、いろんなところが仕事の場所になった。この失われた11年、俺の中で変わったのは、バックパッカーのような体験をしたこと。それまではラグジュアリーホテルにオーシャンビュー、五つ星なんて当たり前、リムジンで乗り付けるぞ! みたいな感じだったけど、それが沖縄のゲストハウスでの共同生活とか、初めての体験が多くて。
――ヘンタイカメラとしての活動は、今の自分の中で大きな存在でしょうか?
YTR うん、大きいよ。知らない世界を見せてもらったし、それは今でも続いている。それが順調だからこそ、このアルバムを作らなければいけない使命感にも駆り立てられたんだよね。ヒップホップに対する自分のけじめというか。俺は10代の頃からV.I.P.クルーに所属しているし、ヘンカメではトランスにラップを乗せたりもしてる。だから、ビートに関するこだわりがないのが俺のプライドっていうか。“信州信濃のラップマシン”って言ってる以上、何にでもラップを乗せるぜ! みたいな感じ。ヒップホップに限らず、音楽が好きなんだよ。テクノもエレクトロもソウルも歌謡曲だって何でも好き。
――それは自分の中ではずっと一貫していると?
YTR 90年代のウータン・クラン全盛期にリリースした『THE ★ GRAFFITTI ROCK ’98』は完全にエレクトロだったし。事務所の社長には毎回怒られるんだけど、「ユウちゃんはいつも3年半早すぎる。勘弁してよ」って。ティンバランドのようなビートにしても、早口のラップであっても、日本で流行る前にもうやっちゃってる。つまり、みんなが気づいて定番になったときには、もう違うことをやってる。
――ずっと、そういう感覚でやってたんですね。
YTR やっと時代が俺に追いついて、昔の曲もみんなが愛せるようになったんじゃないかな。だから、この11年は無駄じゃなかったって思える。結局、あまのじゃくなんだよね。みんなと一緒に群れたくないし、同じことはしたくない。自分だけ、また別な方向に行くよって。
――90年代に日本のヒップホップ・シーンのど真ん中にいた人がそう言うのは興味深いですね。
YTR 勝手な話だよね(笑)。でも、それがオリジナリティだよ。
――「THINK ABOUT WHY YOU STARTED」は今回のアルバムの中でかなり好きな曲ですね。
YTR これはもうアルバムの核心というか、背骨になるような曲だね。
――昔の曲でいうと「BACK CITY BLUES」(『THE★GRAFFITI ROCK ’98』収録)を思い出しました。
YTR 「BACK CITY BLUES」みたいな語り口調は、俺の得意分野のというか、ひとつの売りだからね。そこにいる人に対して、切々と話すというか。ラップとはまた違って、ポエトリーリーディングともちょっと違う。この曲のテーマは、この11年の中での苦悩というか、「44 YEARS OLD」ではなかなか謝れなかったこともあって、離れていったファンや友達とかに対する懺悔でもあるんだよね。
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