「この11年は無駄じゃなかった」失われた時にけりを付けるYOU THE ROCK★がILL-BOSSTINOと起こした化学反応
#YOU THE ROCK★ #ILL-BOSSTINO
BOSSとO.N.Oの求めにYOU THE ROCK★の応え
――BOSSさんは、そのタイミングで話したのはなぜでしょうか? 以前からあたためていたアイデアだったんですか?
ILL-BOSSTINO(以下、BOSS) そんな話をするつもりはまったくなくて、ノリで出てきた話で。うちにはO.N.Oってすごいビートメイカーがいるから、2人をくっつけて「1曲作ってみなよ?」ぐらいの話を、その時に初めて思いついて。
――そこから実際のレコーディングが始まったのは?
YTR 話をした翌年だから、去年の1月後半ぐらいかな。それからO.N.Oちゃんのトラックがガンガン送られてくるようになって、そこから始まった感じ。
――トラックを聴きながら曲のアイデアが浮かんでいった?
YTR そう言っちゃえばそうなんだけど、O.N.Oちゃんの音楽っていうのはトラックやビートっていうくくりじゃなくて、完全なるアートなんだよね。芸術性が高くて、オーケストラを聴いているような感じ。だから、一聴しただけじゃ理解できない。それを解読するのに時間がかかって。そしたらコロナ禍になって、「じゃ、俺、札幌に行く!」って単身乗り込んで、そこからほぼ合宿みたいに毎回2週ずつ滞在して、毎日千本ノックを受けるような制作になったね。
――当初は1曲の予定だったのが、フルアルバムになった背景というのは?
YTR 最初は作れるところまで作ろうって感じだったんだけど、正直、自信はなくて。リハビリもできないまま本戦に突入しちゃったからさ。だから、スキットやイントロを入れて、10曲ぐらいで勘弁してくれないかな? って思ってたんだけど、全然逃げきれなくてね。どんどん機関車に炭を放り込まれて、「お前、もっと走れるだろ?」みたいな感じ。
――その時点でアルバム全体のテーマはあったのでしょうか?
YTR テーマは今の自分、取り残された俺みたいなもの。あとTBHRから出すなら、逆にTBHR的なものじゃない、完全に俺のアルバムにしようと思った。BOSSに飲み込まれないように、俺のカラーでやろうって。
――率直な感想を言うと、自分自身をむき出しにしているのを感じたし、恥ずかしい部分も全部出しちゃってるなと。それは覚悟として最初からあったのか、それともビートによって引き出されたのでしょうか?
YTR 導かれた、っていう感じだね。あと、俺は言葉のノートを集めるタイプだから、オファーが来たときにその言葉の羅列をくっつける作業。その言葉のストックがすごく大事になった。朝起きて、降りてくる言葉をメモするんだけど、それ以上捻り出さずに、あえてしまっておいて徐々になじませていくんだよ。書いた言葉を、そうやって自分のものにする作業のほうが大きかった。
――今回のアルバムも基本的にそういうやり方で作ったんでしょうか?
YTR そうだね。言葉のノートのストックも3冊分あったんだけど、17曲もあるから、札幌に行って一瞬でなくなっちゃってさ。それからは書いては録って、録っては書いてみたいな。
――プロデューサーの立場からアルバムの内容について助言などは?
BOSS リリックに関しては、「個人的にこういう曲を聴きたい」っていうリクエストはしたね。ただ、THA BLUE HERBもそうなんだけど、作っていく途中で全体が見えてきて、不足しているものを足していく感じで作っていく。きっとO.N.Oちゃんもそういう作り方でやるだろなって思っていたから、全体像に関しては2人にお任せで。
――実際、札幌に入ってから制作はスムーズでしたか?
YTR 苦しまなかった。もうスムーズしかない。O.N.Oちゃんと一緒にいると楽しくて、終わっちゃうのがもったいないくらい。曲ができればできるほど別れが近づいてくるわけだから、悲しくなってきちゃってね。「これが永遠に続けばいいな」くらい感じてた。
――アルバム1枚をひとりのプロデューサーと丸々作るというのは、デビュー初期のBEN THE ACE以来だと思いますが、相性の良さの理由って何だったんでしょうか?
YTR やっぱり同じ歳、というのが大きいんじゃないかな。BOSSもそうだし、俺もO.N.Oちゃんも同じ歳。聴いてきた音楽や見てきたもの、あと食べてきたものとかもほぼ変わらない。それに(地元の長野と)雪国同士ってのと、俺の母親が札幌生まれで今も札幌にいるし、親戚もたくさんいる。子どもの頃からよく行ってた土地でもあるから、半分は北海道の人間って思ってるくらい本当に好きな街なんだよね。
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